自由研究6■霞ヶ関・銀座企画2001.9の記録


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企 画:外国人建築家の都市・東京(その2)

日 時:2001年9月16日(日)14:00〜17:30
コース:霞ヶ関駅→旧法務省→DNタワー21→東京国際フォーラム→OPAQUE Ginza→メゾンエルメス→東京銀座資生堂ビル


参加者:13名
◎溝辺正浩、磯田尚子、井手幸人、小俣元美、鎌原史英、栗原徹、千川明、野中るみ子、水谷晴子、桜井ひろみ、桜井香織、田野裕美、脇野真澄


[参加者の意見]


1.旧法務省(エンデ&ベックマン)  評価:AAAAAAAAABBBB =4.38
●レンガ造の建築物が少ない東京では貴重な洋式建築(ドイツ・バロック)。庭が見られるといい!
●赤レンガの建物は明治という時代の雰囲気と強く結びついており、可能な限り復元・保存してほしい。
●東京駅みたい。屋根は後から…と判らない程ピッタリ合っている。固い法律に人間味を感じさせてくれる。
●今の官庁群の建物に比べ、単なる機能だけでない重厚感がある。
●一際目を引く存在。美しい。
●歴史的価値と、保存されていることを評価。
●あれだけの建物を復元したのは立派。
●歴史の重みを感じさせる建築でこれ自体はなかなか良いが、周辺の官庁建築はどうしてこんなに味気ないのか。
●官庁街で唯一威厳をもった建物。なぜ現在の省庁は建替時にこういった威厳あるデザインにしないのか。
●まわりの建物(ビル)があまり良くないので、この建物の良さが引き立っていない。
●周辺から浮いてしまったけれども、資料室として保存されている点を評価したい。
●荘厳な感じ。概観の完成度が高い。休日は中に入れないのが残念。
●ぜひ中を見てみたいが、あの公開時間では難しい。


2.DNタワー21(K・ローチ)  評価:AAAABBBBBBBBC=3.46
●旧第一生命館と新しい高層部分とのバランスが良く、全く違和感なく再生されている。また、お濠に面して高さが揃った建築群は日本でも最も美しい景観のひとつ。
●第一生命のドイツナチズムを思わすような列柱を高層ビルのデザインに採用し、全体として統一が取れている。また、2つの保存再生方法を見ることができる。
●新旧をおりまぜ活かして考える設計は必要だし、周辺との調和を考えるのも必要。ここはよく考えられている。
●既存の街並みに配慮して計画されている点が良い。
●街並みを守るための試みとして面白い。
●お濠に面した外観は本当にきれい。建築は少し離れて全体を見るものと実感。一般公開されたら内部も見学したい。
●お堀から仰ぎ見ると、感じのよい落ち着いた建物に見える。
●お堀から見る外観はバランスがよく美しい。
●お堀からみる光景は美しい。私の趣味としては、どこかもの足りない。
●綺麗になりすぎ。
●何気なく側を歩いていてもわかりにくいが、周囲をーまわりしたり、少し遠くから見ると素晴らしさがよく分かる。


3.東京国際フォーラム(R・ヴィリオニ) 評価:AAAABBBBBBBCD =3.23
●通り抜け広場の木が育って、とても心地よい空間になった。
●植栽が育って広場の雰囲気が竣工当初よりぐっと良くなり、心地よい空間になっている。
●開放感があって心地良い。緑も育ってきて、中庭も良くなってきた。
●時聞が経ってきて落ち着いてきた。
●完成してからかなり時間が経過しているので、当たり前のようだがすぐれた建築。中庭は木が育ってきたため、空間的には成熟か。
●年月を経て良くなる空間に最高の評価をしたい。木々の成長を設計時から考えるやり方は好き。
●オープンスペースの役割がとても大きい。銀座では少ない四季のある緑が、建築の大きさを意識させず、ガラスホール棟からも見える。
●人が集まりやすい雰囲気がある。
●中庭は樹木も育っていて穴場。座れる場所がもっとあれば。バブルと言うより風船みたいな建物。
●木が茂り都会のオアシスのようでいいのだが、少し暗すぎる。この箱の運営は何処へ!
●こんなに維持費のかかる建物は、あるだけで無駄。
●バブルな感じでもあるが、あの時代だからこそできた賛沢なスケール感が楽しいと思う。
●運営上はきびしそうだが、ガラスホール棟のような場所があること自体が都市の資産となる。


4.OPAQUE Ginza(妹島和代) 評価:ABBBBBBBCCCCC =2.38
●都会的な雰囲気を出していて、自己主張しすぎることなく周りに調和している。
●明るく開放感がある。
●ガラスの部分(ファサード部分)のみ酒落た感じで明るい雰囲気を醸し出している。が、建物全体に目を向けるとちょっと寂しい。
●この部分だけ見ればとても美しく仕上がっているが、建築全体として見ると、とってつけたような感じ。
●銀座通りで目立つ建物ではある。
●商店の建ち並ぶ明るい通りにあっては活かしきらず、の感がある。
●銀座という場所で長く親しまれるだろうか、と考えると疑問が残る。
●なぜか入りにくい。
●別に珍しくもなく・・・つまらない。
●単純な不透明ガラスのファサード改修は、同じ手法をとった向かいの松屋が勝ち! 夜も松屋の方が凝っていた。


5.メゾンエルメス(R・ピアノ) 評価:AAAAAAABBBBBC =3.92
●全面ガラスブロックのファサードは非常に新鮮であり、特に夜景の美しさは特筆に価する。
●日々変わる銀座という街にガラスブロックという材料を用いた建物を埋め込むとは、さすがピアノ先生。隣のソニービルともいい感じで調和している。
●ガラスブロックが圧巻。数寄屋橋の交差点あたりから眺めてみた方がいいかもしれない。
●ガラスブロックの建築。夜景が美しい。ブロックをショーケースにするなど手が込んでいる。屋上の像も目を引く。
●四角ガラスで覆われた壁画は、昼はあまり・・・? ショーウインドゥが小さい。夜、ゴージャスに輝くのでしょうね。中も見たかった。
●街並みの中で、思いがけず地味な存在感に驚いた(昼間だったためもあるとは思うが)。ロゴも一切ない壁面が、光に包まれる夕景を見てみたい。中へも入ってみたい。
●夜、オレンジ色に照らされたガラスが幻想的。
●光をうまく利用していて、夜の方がきれい。
●夜の銀座の、光の洪水のような光景の中で、巨大な滝に見える。
●異様な威圧感を感じる。デザインに繊細さがあまり感じられない。
●悪目立ちしないのに個性的である。
●商業施設としての役目を十分に活かしている。
●こういう事もできるのか、と患った。

6.東京銀座資生堂ピル(R・ポフィル) 評価:AAAAAABBBBBBC =3.77
●ファサードのプロポーションが素晴らしい。銀座通りの他の建築に高さを合わせていないが、20 年後には全体が高くなることを予期してか。
●新橋寄りの銀座通りは地味なイメージだが、それを払拭するランドマーク的な存在。
●外壁の独特な質感は革張りを連想させ、金色の建具やロゴもあり全体が鞄のよう(資生堂の商品を入れるバッグのイメージなのでしょう)。
●外観のバランス、色調ともグッド。
●あの通りにあって、それなりの存在感と一体感があると思う。
●雰囲気が資生堂。通り抜け空間が合理的。
●朱塗りの漆器のように華やかで落ち着きがある。
●漆のような赤土のような色合いに、ハッとした(後で資料を読んで、錦鯉の色が手掛かりだったとは意外だった)。
●壁の色がいやらしくて銀座に似合わない。
●好きな色合いです。せっかく1階を公共性のある空間にしたのだから、もっとオープンにしてもらいたい。
●入口には受付嬢がおり、オフィスビルのよう。もう少し、開放的な空間であってほしい。


■外国人建築家の作品は、日本人の作品とどこが違うと思いますか?
●西欧の一流建築家は、都市の文脈を読み取り、周辺との調和を考え、都市の一部として建築を設計しているように見える。これに対し、日本人建築家は都市を意識せず、敷地のみを考えて設計している場合が多いように思える。
●現段階では、外国人建築家も日本人の建築家の作品をみても大差はないと思うが、都市という限られた文脈の中での建て替え、新築は外国人建築家の方が上手いように思う。
●外国人の作品はすっきりして、デザインが美しいという印象がある。
●外国人建築家は、色使いが大胆なものが多いと思う。
●まず、色使い。それから素材の使い方。
●直輸入物の建築材料が目立つ気がする。
●空間のスケール感。
●異文化として日本に触れた人々が、それなりに深く追求した結果として作られた物には、日本人にとって日常や時代の中で、忘れ去っている何かを凝縮している場合があり、そこに違いが見えるのではないかと思う。かつてはともかく現在は、文化や土地(街)等の関わりの捉え方がひとつある気がします。しがらみの無さが吉と出れば。
●制約につぶされ気味の日本人に比べて、外国人はのびのびと作らせてもらっているように見える。
●大胆であったり、一見異様に見えても、全体のプロポーションや周囲との関わりの捉え方がしっかりしていて、ツボを押さえた物になっている。


■東京に外国人建築家の作品がある意味は何だと思いますか?
●外国人建築家といっても国もスタイルも様々であり、優れた建築もそうでないものもある。外国人建築家の作品というよりも、外国人設計の本物の建築があることは日本に希薄な「都市における建築」を意識させる意味がある。
●今回見て回った建物でも、学習の時代(エンデ&ベックマン等)、市場開放の時代(ローチ、ヴィニオリ等)、企業イメージの時代(ボフィル、ピアノ等)と、その時代毎で外国人建築家の役割というものは違うように思う。現在、ブランド製品のイメージアップとして登用される建築家は、日本でも何人かはいるかも知れないが、商品価値としては外国人の建築家の方に軍配があるように思われる。
●流行と新新さ、話題性を求める施主の心意気。長くそこに存在することを意識しているかどうかは不明。
●特に日本人と外国人を区別する必要はないのでは。でも、日本人建築家はもっと日本文化をアピールする建築を作ってもいいのにと思う。
●繁栄の象徴としての豊富なコレクション。
●日本人建築家への刺激となる。
●建築デザインへの刺激となる。
●街を歩くときには意識しませんが、善し悪しを別にして多様さと公正さでしょうか。


■今回の企画への感想
●時間的に余裕があったので、外国人建築と日本人建築を対比しながら (旧法務省と新しい合同庁舎、 DNタワーと東京銀行協会、エルメスとソニービル、東京国際フォーラムと東京芸術劇場など) 歩くと面白かった。(栗原徹)
●ピアノ、妹島は没個性で夜景に映える建物を意識しているのに対し、ボフィルは彼の個性を打ち出した様式的な昼間を意識したデザインとしているなど、各建築家の銀座のとらえ方が建物に出ていて非常に面白かった。(井手幸人)
●建物を見て歩くのが好きなので、新たな発見がたくさんあり楽しかった。建築は近くで見るより少し引いて見た方がいいと思った。O氏が「立派な建築物の前には広場や公園がある」と言っていた意味を改めて実感しました。(脇野真澄)
●外観、デザインが中心となるのは仕方ありませんが、使われ方などもウオッチできたらよいと感じました。(小俣元美)
●わずか数kmの範囲内に、古今にわたる素晴らしい建物がひしめき合っていることを改めて実感した。本編もさることながら、寄り道(日比谷公園沿いの古い商業ビル等)にも恵まれていた。(磯田尚子)
●三信ビルの中はレト口で不思議な空間でした。宝塚ビルは苦心したようで微笑ましい? めったに歩かない霞ヶ関、(省庁の)食堂巡りしたら今の日本が見えてくる・・・かな?(桜井ひろみ)
●霞ヶ関の休日の様子も見ることができて良かったです。銀座の街が変化していることを実感できました(新しいエルメスビル等)。懇親会の場所も、グッドでしたね。(水谷晴子)
●「仕事と同じ服装だったら」、銀座も歩きやすかったし、エルメスにも入れたでしょう。(野中るみ子)
●久しぶりの都心企画を堪能できました。(千川明)
●久しぶりで都内を歩き、情報と変化から離れていたことを実感しました。街をいかすも殺すも変える力をもつ法制度と、街並を壊すも造るも大きな責任がある建築家(業)、身近かな所でも素朴な疑問をいろいろ感じます。(鎌原史英)


■コーディネーターより
今回のコースは、官庁街→オフィス街→商業地といった目まぐるしい展開が比較的狭い地域にあり、まち歩きとしても面白い所です。現に当日は、評価対象にしていない建物(三信ビル、新宝塚劇場、帝国ホテル、泰明小学校、交洵社ビル、煉瓦街跡、グリーンビル等)も見ながらふらふらと歩き続けたのでした。思い立つとすぐ脇道にそれるという困ったコーディネイターに最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。(溝辺正浩)


■シリーズ企画者より
今回の企画、いかがでしたでしょうか。数年前の「外国人建築家の都市・東京その1」では、青山や原宿方面の裏通りに点在する秘密の小さな宝石箱のような作品群を巡りましたが、今回は都心の一等地に堂々と立ち、注目を集める様は、活動も国境を超えた時代になったことを痛感させます。7月の「外国人建築家の都市・福岡」では、たくさんの個性的な作品が都市の顔を創り、多くの人が出入りしていて、福岡では外国人建築が都市の日常となっているようでした。東京もやがてそうなっていくのでしょう。またそのうち、このシリーズを続けたいと思います。(大竹 亮)


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