私たちの街を歩こう■川越緊急企画2001.12の記録


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わたしたちの街を歩こう/緊急提案2「どうなる!織物市場」


 川越緊急企画の記録  −旧織物市場と裏通りの今−      2001,12.9 13:00〜17:00
 12月9日は、快晴ながら風のある寒い1日となりましたが、川越市役所の荒牧氏、地元建築設計事務所の草野御夫妻にご案内いただいて、旧織物市場と川越の裏通りを歩きました。
◆コース:川越駅・駅前広場〜八幡通り周辺(三番町ギャラリー)〜クレアモール、新富町商店街(旧鏡山酒造)〜喜多院周辺〜立門前通り周辺(旧織物市場、旧劇場・映画館、大正浪漫通りの建築、川越キリスト教会)〜裏宿通り周辺(荒牧邸ほか町屋、札の辻)〜一番街の裏通り(菓子屋横町ほか)〜蓮馨寺周辺から川越市駅(旧カワモク本部ほか) 
◆参加者:荒牧澄多 草野光 草野律子 石橋理奈 井手幸人 大竹亮(12月1日) 小俣元美 坂井直美 高山清茂 田中登 千川明 野中るみ子 藤井正男 溝辺正浩 小島絹江(懇親会のみ) 鎌原史英(コーディネーター)


[参加者の意見]


評価 A:とても良い/B:良い/C:普通/D:良くない

1)旧川越織物市場について
(1)評価
周辺との関係:ACCCCCCCCDD
建物:ABBBCCCCCCD
総合評価:ABBBCCCCCCC
●現地に行った瞬間に土地利用の問題を認識。伝建地区も含め、商業地域400%の指定がなされている以上、起こりうる問題。土地利用と街並み保存をセットにして考える必要があるのではないか。建物そのものの価値というよりは、歴史的な背景を持った建物としての価値なのでしょう。
●折れ曲がった路地を挟んだ2棟の間(ま)が絶妙。隣に高層マンションが建ち、空間の違いが歴然。
●一歩奥まった所に存在しており、川越のランドマーク的な使い方は非常に難しいと考える。比較的小さな施設として、川越の産業をPR出来るような「産業奨励館」の様な施設が良いのではないか。
●建物の状況は必ずしも良くない。市場の形式としては貴重と思うが、住宅となってどの位変更が加えられているか。蔵造りのように堅い建物なら活用の仕方も考えられるが、現状の保存・活用するのは難しいのでは。
●建物の傷みがひどく表通りからも分かりづらい。しかし低層の囲み型空間はこの地域でここだけの貴重なもの。
●川越の残していきたい産業と消費者を結びつけることができればと考る。個人的には、昔の「屋号」の様な札が今でも残っていたことが印象的でした。
●車が行き交う通りから市場の建物が2棟並ぶ空間に入ると、そこはうら寂しい幻想的な映画の舞台セットよう。長屋の引き戸から浪人が飛び出てきそうな感じがするぞくぞくする空間。上を見上げるとマンションが覆い被さっていました。これが現実・・
●にぎやかな通りから近いのに目立たず、忘れ去られたまま今日に至ったという感じ。後ろにあるマンションの圧迫感があった。
●住居としては非常に濃い空間だと思った。


(2)どのような保存・活用が望ましいか
●全国で唯一残った木造の織物市場なので、建築学上よりも産業遺産として貴重。場所の記憶を残すためにも、市場として使われた状況を想起させるような活用を望みたい。商業施設とか・・・。
●できる限り昔の状態を回復しつつ、市場の記憶と広場を活かしてコミュニティ広場として使えないか。2階部分は内装設備を工夫して住宅でもよい。
●立門前通りの雰囲気はまだ結構残っているのに、一部のマンション開発による街並み、景観破壊が大きい。できれば現在の場所での保存が望ましいと思うが、隣のマンションの影では、市場のイメージを残すにも限界がある気がする。立門前通りに面してかつマンションの影にならない場所に移して、活用すべきと思う。
●形式を大切にして引き継ぎながら、建物自体は建て直すことを前提で活用方策を考える。マンション化も現計画を改善する方策もあるのでは。(低層部商業施設、コートハウス的な集合住宅で、ファサードなどは継承するなど)
●後ろにマンションがそびえる今の場所にそのまま保存するよりは、解体修理が入るだろうから別の場所に移築するのがよい。
●建物全体の保存は難しいと思うので、記録保存を中心にして建物の一部のみ移築保存が良い。記録は、測定・図面化だけではなく、写真やビデオを活用して、外観や内部の記録、所有者や長年住まい続けた居住者の思い、住宅としてどのように生活していたかなども記録として残すと次につながるのではないか。 
●市場の建物は街の記憶としては貴重な建物であろうが、保存していこうという市民の関心が熟成されていないのではないか。また保存するには、建物を再度建て直す位の大手術が必要ではないか。現実的には、土地の記憶を後世に知らしめていくためにも看板など作成して(市場の写真+コメント)どこかに設置させてもらうかマンションオーナーと交渉していくことではないか。
●保存するには老朽化しすぎている感じがする。
●イメージの保存・復元。
●商業空間として再構築する。


(3)来訪者として何をしたいと考えるか
●保存活動を実施に行っている活動団体の紹介あるいは活動を支援する寄付金のインフォメーションが案内所などがある良い。そうした情報があれば、街を歩き共感した保存建物を支えている活動に寄付をしたいと思う。
●一番街以外にもいい街並みや建物が多く存在すること、それが崩壊の危機に瀕していることを認識し、多くの人に伝えるとともに、自分の住んでいる街のまちづくり活動に頑張り、連帯したい。
●自分が素直に感じるとおり、かつ地元の活動に対して、できる範囲のことをすべきと思う。(補足:問題に対する情報ソースが地元の蔵の会〜今回コーディネーター〜tekutekuであり、地元組織があること、かつ、情報発信できることがこのまちのこれまでの努力の成果なのだと思う)何をすべきかの問題提起があればこそ、この来訪者としての立場が生まれるのですから。
●価値のあるもの、面白いものを見つけ、訪れること。物を買うなど消費していくこと。
●保存地区内や散歩道ルートを利用して積極的に歩き回る。裏道にも目を向ける。
●修繕工事の作業手伝い。襖や障子貼りなら練習すればできるかも。
●陰ながらの応援
●こんなことしたら行きたいと思うこと:最後に(取壊し前に)盛大に建物を開放してお祭でもやって欲しい。建物の歴史は、川越の発展の歴史でもあると思う。内部公開して、今までの建物の歴史や活用の足跡がわかるようなパネル展やビデオ展をする。織物や川越の産業に関わる体験教室や出店をする。広場でワークショップや餅つきなどをやって、往時の活気を再現し、人がここに集まることの価値の確認(または長年がんばった建物の慰労)をやるのはどうでしょうか。物質的な記録だけでは人の心の記憶には残らないし、賑わいのある織物市場を知っている人がいないような気がしたので、そう考えました。



2)裏通りの街並み等について
2-1)川越駅〜八幡通り
(1)評価
:ABBBBBBCCCC
(2)印象に残ったもの:
●駅前広場
●陸橋
●三番町ギャラリー
●まるひろ駐車場 
●小綺麗な家やお店 
●住宅と地域を支えた産業


(3)コメント
●交通が交錯していて迷った。
●(三番町ギャラリーの)まちづくりと美術活動が一体となって展開されている活動がすばらしい。街に文化的土壌があることと、まちを大切に思う人がいるからでしょう。
●非常に賑わっている。建物の高さや道幅が程良い。
●人通りの多さと、一番街と比べて観光客の比率の少なさが印象的。
●駅ビルや商店街のすぐ裏なのに普通の住宅地の縁にきているのには驚いた。
●駐車場によって街が壊れつつあるような感じ。歩道橋に川越のデザインを所々に入れているのが印象深かった。
●車が多い、本当に裏通りという感じ。


2-1)クレアモール、新富町商店街
(1)評価:ABBBBBBBCCC
(2)印象に残ったもの:
●にぎわい、人
●マンションと若者、若者向けショップ
●セットバック部分に並ぶ商品
●マンション開発で歯抜けになる商店街
●マンションの出入口
●旧鏡山酒造
●ポケットパークのようなところ


(3)コメント
●多様な店舗が展開して楽しいモールであるにも関わらず、マンション開発によって歯抜けになっている様子は痛々しい。条例等による対応で、この場所の固有性に合せたまちづくりになるように期待。
●商店が歯抜けになりつつあるなど楽観はできないが、活気があり、新旧様々な店がありう魅力的な商店街。
●マンションによって歯抜け状態になった場所。通りのイメージがどんどん変わって来ている。
●マンション銀座と成りつつあり、人口に比較して活気が少なく感じる。
●駐車場前広場(マルヒロ)をイベント広場として商店街で勝つようすると面白い。
●カラオケや小物のショップなど、派手でポップな看板などが目立ちました。
●大人の居場所がどんどん少なくなっている。


2−3)喜多院周辺
(1)評価:ABBBBBBCCC
(2)印象に残ったもの:
●緑
●大イチョウ
●旅館
●旧花街
●緑

(3)コメント
●お寺・神社のオープンスペースは素晴らしい。
●良いというよりは興味深い。お寺の周りに遊郭というのは不思議。
●ふしぎな場所という印象。●旧花街の辺りをもう少し歩いて見たい。
●昔は花街だったというが、今は落ち着きのある良いところ。
●花街の名残ある街が現在の生活とミックスされて面白い。

2−4)立門前通り周辺(蓮馨寺門前町、大正浪漫通り)
(1)評価:ABBBBBBBCCC
(2)印象に残ったもの:
●旧劇場・映画館
●浪漫通りの街並み
●旧川越織物市場


(3)コメント
●旧劇場・映画館をうまく復活させれば、レトロな川越の重要ポイントとなる。
●旧劇場・映画館は、ぜひ復元・活用したい。
●織物市場があるような雰囲気がしない。
●織物市場の入り口付近しか印象に残っていない。これが一番の問題かも。
●幅の広い街路(中央通り)に2階建ての建物が残っている不思議な雰囲気。
●浪漫通りは、一番街とは異なる雰囲気があり、車も少ないので比較的のんびりできる。


2−5)裏宿通り
(1)評価:AABBBBCCCCC
(2)印象に残ったもの:
●荒牧邸(四軒長屋の旧御茶屋)
●表から裏路地に抜ける空間
●細かい道
●札の辻の整備


(3)コメント
●かつての御茶屋街の残像という感じがした。説明してもらわないと気が付かない。今後の活用策について期待。
●味わいがある木造が建築が残るといい。
●荒牧さんの別邸がどう生まれ変わるか楽しみ。
●近代建築を購入してでも保存する荒牧さんの姿勢に感銘した。今後のこの施設(商家)の利用方法に注目したい。
●細かい道は歩いていると目がまわりそう・・。
●辻の肉屋がいい味出している。


2−6)一番街の裏通り(菓子屋横町〜仲町)
(1)評価:AAAAABBBBB
(2)印象に残ったもの:
●菓子屋横町
●歴史的建築物
●道のくねり具合


(3)コメント
●裏通りにも歴史を感じさせる建物がまだ残っており、思わずみっけ物をしたという印象。菓子屋横丁の形成の経緯は、意外で興味深い。時代の移り変わりに適応した面白い事例。
●菓子屋横町の駄菓子は観光地の値段なのでちょっと悲しいが、覗くだけでも楽しい。この菓子屋横町の近くに織物市場を移築すると人がたまってよいのでは。今後の面的な広がりを期待したい。
●車もあまり入らない狭さが、かえって歩いて楽しめる観光スポットになっている。
●目立たないように色や位置に配慮はしたが、むき出しの電柱・電線のその努力に涙。菓子屋横丁に来ると、皆さん童心に帰るのか。人ってこういう細くて物があふれていて、しかも安いところ好きですね。
●お菓子にオリジナリティーがもう少し欲しい。


2−7)蓮馨寺〜川越市駅
(1)評価:BBBBBCCCCC
(2)印象に残ったもの:
●洋館、歴史的建築物
●旧カワモク本部事務所(レストラン Benino)
●お寺の境内
●料亭


(3)コメント
●歴史を感じさせる建物が残っており、思わずみっけ物をしたという印象。
●旧カワモク本部は目立ちますね。
●小江戸としての川越とは別の素顔がのぞけそう。
●洋館が多い。町屋を活用した雰囲気のあるお店もあって面白い。
●暗くなってしまったので、見所の建築がよく見えず残念でした。


2−8)一番街や川越の街全体
(1)評価:AAABBBBC
(2)印象に残ったもの:
●時の鐘
●お寺
●緑
●昔ながらのお店
●刃物屋(包丁)
●産業によりできた 町景観
●人が多く活気がある


(3)コメント
●川越の町の歴史的な背景がいたるところに残っており興味深いが、外の人から見れば一番街のような核的なものがあって、初めて味わえるものではないかと思う。さらに保存・活用が進み、ネットワークが形づくられると良い。
●西武線の川越駅を出て人の流れについていくと、すぐに蔵のまちなみへの道しるべがあり、助かった。迷わず人を誘導させるサインは観光地にとっては重要。
●一番の観光地がものすごい交通量のところにあるのは将来的に限界がでてきそう。ふらっと歩くのが怖い商店街は敬遠する。菓子屋横丁周辺の住宅地に期待。
●本屋や包丁屋のご主人にこだわりを感じた。本物志向でいってほしい。



3)川越の街について
(1)川越の魅力

●歴史の積み重ね
●蔵造りの街並み
●歴史的な建物を大切にし、活かし続けようとする人々がいること。
●活力
●都内への利便性と、歴史が香る文化性、商業が賑わう拠点性を兼ねそなえている。
●駅を起点とした時の街の奥行きの深さ。


(2)良くないと感じたこと
●新しいマンション群が続々と建ち、街並みの連続性を破壊している。
●市街地の多くが用途地域で商業地域であること。
●車と歩行者とが共存できていない。
●交通渋滞
●骨格になる緑が無く、建築が変わると街並みが全く変わってしまう。


(3)歴史的街並みのある都市で望ましいと考える居住環境
●旧市街は街並みを保存し、建物も修復を基本とする。車の乗り入れを規制し、歩行者優先を徹底する。(ヨーロッパでは当たり前)。
●保存する場所、開発する場所を明確にすること。それと創造される新しい空間を如何に誘導することが重要ではないか。マンションの足下のデザインガイドライン等の整備がうまく出来ると良い。
●願わくば、スケールの違いが大きくならないような居住環境をつくれないかと思う。その街らしい居住環境の保全と土地利用のあり様を検討する必要があるでしょう。
●街並みの景観を乱すものをつくらせない。
●せっかくの蔵のまちなみも後ろにマンションがそびえては台無し。5メートルぐらいの空色にぬったの塀を作って隠してしまいたい。歴史的まちなみを持つ都市は、マンションの高さを抑える必要がどこもあると思う。
●新旧の調和
●ハードとしての環境ではなくソフトとしての環境を整備された都市
●歴史的資産の上にあぐらをかかないで、常に時代変遷に対応して町を考える人を育てる環境。



今回の感想・意見等
●荒牧さん、草野ご夫妻、有り難うございました。
 裏側からみる今回の企画は、川越の置かれている都市問題を実感させて頂き勉強になりました。市場の自由がある限りマンションはどんどん建つと思いますが、こうした動きに危機感を感ずれば成熟した多くの市民活動がある街でもありますし、マンションのデザイン等を誘導していくような動きにも出てくるのではないでしょうか? そうそう、「小江戸ものがたり」(川越むかい工房 300円)という街の雑誌が創刊されていました。面白いですよ!
●「緊急企画」とうたった割に盛りだくさんな内容で、織物市場以外にも川越の街で何が起きているのか、どうしようとしているのかが分かりました。問題はいろいろありますが、川越は魅力的な町ですね。
●みごとに裏通りを歩いたという企画でした。それぞれの場所(通り)で様々な個性が感じられました。反面、面的に広い商業地域の指定が個性を奪っているように感じました。住居系と同じように商業系もきめの細かい指定が必要なのではと感じました。
●今回、普段では見れない川越の街を見せていただくと同時に、歴史的背景までご説明いただき、たいへん良い勉強になりました。しかし、その数週間前に京都の町家を訪問し、かつ保存等のお話を伺ったときにもマンション建設の波に埋もれていく町家の状況をまのあたりにし、今回もまた、全く同じ状況を見ることになってしまいました。歴史的建築物の保存と私権の制限が、市民的関心の中で調整されうる可能性があるとしたら、京都や川越ぐらいではないでしょうか。言葉で言うのは簡単ですが、歴史的街並み保存・活用の難しさを感じさせられた1日でした。
●地元の皆さん、寒い中ありがとうございました。本当に寒かったです。しょう油もおいしいです。
●当日は日程が合わず、前の週に駆け足で巡りましたが、織物市場では引っ越しがあり、親子連れやカメラ片手の青年が見に来るなど、差し迫った状況が感じられました。商店街がマンション街道化していく様も、目の当たりにすると衝撃的です。川越の良さは、一番街だけではなく奥が広いとわかりましたが、同時にどんどん崩壊が進んでいるので心が痛みました。
●コーディネーターより
 荒牧さん、草野御夫妻には、寒い中たっぷり半日案内していただきまして本当にありがとうございました。
 また、みなさんもお疲れさまでした。懇親会の席でお預かりした基金は、TEKUTEKU有志として旧川越織物市場保存再生基金口座へ振り込みましたので、ここでご報告いたします。


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