自由研究19■横浜企画2002.10の記録


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自由研究/建築の未来と過去 −横浜大さん橋+赤レンガ倉庫−        
企 画●建築の未来と過去に思いを巡らせ考える
日 時●10月19日(土) 14:30〜17:30
コース●桜木町駅前〜汽車道〜赤レンガ倉庫〜横浜大さん橋〜開港広場付近(意見交換)
参加者●安藤文、石橋理奈、井手幸人、鎌原史英、櫻川惠一、千川明、溝辺正浩、◎小俣元美+水谷晴子(+大竹亮(事前調査))、以上10名                    

[参加者の意見]


1.横浜赤レンガ倉庫       
●明治の建築家、妻木頼黄設計の建物が残されたことはとても良かったですね。広場になにも創らず従前の倉庫の荒涼とした場の感じの継承した、建物と場を保存したのは日本でも珍しい事例ですね。店舗構成はいまいちかも?
●元のレンガ倉庫の外観を良く修復し、内部は思い切り新しくしている。ガラス階段も従前のトロッコレールを見ることが出来るので良いと思う。
●とりわけ買いたいものもないのに、とにかく人が多いと思います。不思議なところ。建築やその内部は合格点ですけど、外部空間がとても寂しい。
●店舗はこれといって変わったものがないので、みやげ物に終わらないようにがんばって欲しい。むしろ多目的スペースの方がおもしろいプログラムがありそうなので、ドックヤードと並ぶ文化の発信基地になって欲しいです。
●建物周りが殺風景な感じ。港や貨車(線路)とうまく関連させて、建物周りをもっと楽しい空間すればよいと思う。商業施設としては、このまま流行っていくのだろうか?交通の便は悪いし、一度行けば十分という気がする。
●建築そのものに魅力があるので人は集まると思うが、建築だけを見せようとしているような周辺のつくりがさみしい。
●歴史的建築を保全している点、内部を大胆に改装して商業利用している点は評価できるが、周囲の外構が平板であり、せっかくの建物が孤立してしまっているし、水辺との関係も薄い。都市デザインの視点が不足。
●外構が広すぎる。かつての港としての倉庫の機能としては必要だった内容をただとっただけでは現在の施設としては成り立たないと思う。建物と建物の間などは植栽や芝生広場を設けるとかワゴンショップを散らすとか港の雰囲気をもっとつなげるとか多少の演出が必要と思う。


2.大さん橋国際客船ターミナル  
●全く新しい発想の建築である。曲面ばかりの床・壁、すべて木貼りの外観など奇抜でありながら、開放的で居心地の良いさわやかな空間を提供している。海風に吹かれて、何も考えずに過ごしたい場所。
●今までに経験したことのない空間でした。最寄りの駅、施設から桟橋まで新たに人通りができ、その間に新たに店や、従来の店が再活性化してたり、周辺への波及効果は大。かかったコスト、維持費等についての指摘は多々ありますが、こうしたわくわくする施設ができたことは素晴らしい?
●360度の眺望が楽しめ大変気持ち良い。うねっている床が楽しい。
●ウッドデッキの集合体とも言えるので、周囲の景色を忘れたら大草原の中にあるような思いになる場所です。
●岡のように盛り上がった木製のデッキがすばらしい。内部はシンプルな作りで機能性も充分。
●避難や木デッキの老朽化を考えると、きちんとした補修を重ねて(今の良さをいかして)、
ずっと永く使われる施設になるかどうか疑問がある。
●養老から足元危険なところが続いて楽しかったです。ピノキオ気分でくじらの背中や体内の冒険をした気になりました。
●建築物だけれど"みなと未来"から見ると港の丘のようだった。のんびりと丘の上で座ったり眺めたりしている空気が伝わってきて非常によかった。


●評価集計結果

対 象
<総合評価>
<項目別評価>
評価 内訳 @デザイン A使い勝手(機能性) B周辺との関係(環境との調和) C快適性(アメニティ)
■ 横浜赤レンガ倉庫
3.5
AABBBBBB
4.5
2.75
2.75
3.75
■ 大さん橋国際客船ターミナル
4.5
AAAAAABB
4.75
3.25
4.25
4.75

[注]評価は、総合評価に加え、@デザイン、A使い勝手(機能性) B周辺との関係(環境との調和) C快適性(アメニティ)の4項目について、A〜Dの4段階評価。(点数は、A=5、B=3、C・D=1)


[自由研究1]  50〜100年後に名建築だと言われるためには、現在どういう建築を創ればいいと思いますか? 
●未来は予測不可能であり、最後は感性の問題になるので、理論的には決められない。優秀な建築家に、もっとたくさん仕事をしてもらうことです。
●素材・技術・環境は徹底してその土地にこだわりつつ、機能を満たしている(可能性がある)ものがいいと思います。
●造り手が一生懸命、丁寧に造った建築。(ex.凝ったデティール、真似のできないデザイン等)。これを壊すのはもったいないなあと思わせないことには、残っていかない。次に基本的な部分に欠陥がないこと。躯体の耐久性、設備の更新性等、長寿命であること。
●街のコンテキストを十分考慮し、デザインについても住民等の意見に耳を傾け設計された建物。
●こだわりを持ち、心を込めて造ることだと思います。
●メンテナンスが楽なものをつくる。いつまでも完成しないで手を加えられるものをつくる。
●デザインというよりも理由がはっきりしているもの使う人が気持ちのいいもの。小さな村の祠でもおばあさんが毎日大切に掃除をしたり手入れをしたりしているものや建物でもみんなが住み心地のよいものなどは大切にしたり工夫したりしているものがある。デザインや質がよければニューヨークのビルのように残っているものもあるが、日本で語るにはあまりにその場しのぎのものが多いので比較にはならない。建物は残すためだけ考えないほうがいいと思う。どう使いたいのか、なぜ必要なのかということがはっきりしていると、作り方や方針がはっきりしていてみんなにとっていいものができる可能性が高い。
●作られた時代を象徴し、使い捨てではない親しみを持って使い続けられる建築を、現代において作るのは難しいと思いますが、軽さと包み込む様な柔らかさを持つ建築なら今の時代を象徴する建築として後々まで使われる可能性がある。


[自由研究2]  過去の建築の保全事例でいいと思うもの (:理由)
◆神戸大丸+居留地建築群 :一帯の戦前様式建築を保存するだけでなく店舗として生きて使われており、街全体がみごとに再生している。
◆南海なんば駅+サウスタワーホテル :御堂筋の最南端に屹立する戦前建築を保全しつつ、ハイテク調の超高層タワーを建設し、対比的なデザインが新たなモニュメントとなっている。 
◆さくらアパートメント :名古屋都心の路地裏の木造旅館や長屋を改装し、小さなお店がたくさん並ぶ。変化が早く小回りがきく都市の本質を体現している。
◆小樽運河倉庫群 :運河に面する景観を保全し活用することにより、一帯の景観保全と活性化の起爆剤となった。
◆銀座ライオン :内装が素晴らしい。
◆青山 まい泉 :銭湯をとんかつやで残すというのがおもしろい。         
◆国際こども図書館 :随所に苦労がうかがえる。
◆東京駅 :何はともあれ使われている。
◆東京駅 :使い方を工夫しながら使い続けているから
◆上野駅(改装後) :駅舎の古い部分や雰囲気を残しながら、にぎわいを創出。
◆グランドセントラル・ステーション(NY):保存を成立させるための制度を創設させた
◆中之島中央公会堂(大阪) :長年の市民活動の結晶
◆寺内町今井町の建物群(奈良) :街並み保存活動のきっかけをつくった
◆中之島中央公会堂(大阪) :長年の市民活動の結晶
◆旧八幡郵便局(近江八幡) :八幡に点在しているヴォーリースの建物の保存再生からまちづくりへ向けての活動に至った拠点施設
◆旧第一銀行熊本支店(熊本) :市民団体(熊本まちなみトラスト)と企業の協力により成し遂げられた動態的保存
◆カラコロ工房(旧日銀)(松江):銀行の内部空間と装飾をうまく活用した店舗の配置
◆東大寺 :匠の技術と執念は永遠だと感じるから
◆cofee brick :小さなレンガ造りの蔵だったが親が作ったこの蔵を大事にしてるのがよくわかる建物だったから(もちろんもって雰囲気もいい)
◆ロンシャンの教会:穏やかだから
◆文房堂(神保町):ファサードの完璧な保存。従来のまま使用されつづけている。
◆自由学園:内外観とも復元保存。用途は変わったが開放的で身近に感じる。
◆立教大学:免震構造の導入により建物を保存。増築部分も従来の雰囲気を壊していない。
◆ル・グラン・ルーブル(ルーブル宮殿・美術館) :日本でこれに匹敵するくらいの再生事例が欲しい。


[自由研究3]  未来を先取りしたいい建築だと思うもの (:理由)
◆新梅田シティ・梅田スカイビル :超高層ビルを連結する着想とその独特の美しいデザインは、その後も他の追随を許していない。
◆オアシス21 :名古屋都心のビル街に、地下街直結のバスターミナル、サンクンガーデン、空中広場、商業施設をインフィルしている複合性が、多くの人々をひきつけている。デザインも軽快。
◆JRセントラルタワーズ :シンボリックな2棟の超高層ビルが中央駅の存在をアピールし、名古屋駅も機能的に生まれ変わった。夜景もとても美しい。
◆釧路フィッシャーマンズワーフ :ウォーターフロント建築の先駆けとなった。毛綱毅曠のデザインが存在感を主張している。
◆すみだ生涯学習センター :路地や広場、分棟とブリッジ、透明な外壁などによって、コミュニティの諸活動が相互に触発し合う仕掛けを空間構成に表現している。
◆銀座資生堂 :外観が印象的だったので。
◆猪熊弦一郎現代美術館(丸亀) :次につながる場を創造する力をもつデザイン
◆展望レストハウス クリスタルビュー(葛西臨海公園) :自然との融合したモダンデザイン
◆葛西臨海水族園:鳥籠のようなガラスのドームを中心とした池と東京湾の景色と構成
◆ワシントンコート(集合住宅)(NY・グリニッジビレッジ) :建築家と公開デザイン審査とによるデザイン
◆水戸芸術館 :展望台にもなるシンボリックな塔が未来的?
◆湘南台文化センター :幾何学的なところ
◆塔の家 :都会の家のスタンダードになるだろうと学生の頃感じた思いは今も変わらない
◆フジテレビ本社(台場) :フレームの集合体のような建築的でないところが未来的
◆グッケンハイム美術館(NY) :人の思考は無限だと感じるから
◆ニューヨークのビル :建物の使い方が完全に特化したもの。今までの生活にはなかったものだろうと思われるから
◆東京国際フォーラムガラスホール :都心部にこれだけ開放的で回遊性をもった建築を作ったのはもっと評価されて良いと思う。


[自由研究4]  あなたが記念碑的な建築と感じているもの(各自ひとつ) (:理由)
◆広島平和記念資料館+国際会議場+戦没者追悼平和祈念館 :爆心地一帯に創られた平和記念公園の中核施設であり、遠く原爆ドームを望む軸線と、虚飾を排した合理的なデザインは、悲惨な体験を伝える展示内容た毎年の平和祈念式典と合わせて、訪れる人々の心に「場の意味」を深く刻み込むことだろう。
◆東京国際フォーラム :維持費のかかる建物をお役所がよく建てたものだ。バブルの象徴。でも気持ちのよい建築。
◆法隆寺 :木材と技(各時代)の粋!
◆ワールドトレードセンター :技術と時代の象徴、都市の象徴そして国の象徴になった建物。
◆ヤマトインターナショナル:未来的な建築とも言えようが、個人的には記念碑的建築。
◆東京タワー :高さと斬新な形がすごいと思う。
◆岡本太郎の太陽の塔 :記念碑的だから記念碑というものではなくて子供のころに見た太陽の塔はセンセーショナルなものだった
◆横浜税関 :貿易港の海の玄関口としての税関が優しげなタワー(クイーンの塔)として建っているのは港町を象徴する建築だと思う。


●今回の企画についての意見など 
●赤レンガ、大さん橋、中華街、元町と歩いて、横浜は見所の多いところだとあらためて実感しました。(H.M.)
●久しぶりのみなとみらいを楽しみました。ラストの中華街のオプションもなかなかでした。(R.I.)
●レンガ倉庫と大桟橋という対照的なリニューアルの事例ですが、それぞれコンセプトが明確でデザインも優れているので、いい事例だと思います。また今回、MM21から山下公園まで新たな歩行ルートができて横浜という街の魅力が増えたのを感じました。(M.M.)
●赤レンガ、大さん橋へは海側からアクセスしたいものですね。大さん橋の未来映画的な空間から周辺のレトロな店舗通りに出るとホットした。この感覚は他では味わえないでしょうね。(Y.I.)
●事前調査のみの参加でしたが、横浜港の新しい風を感じることができました。「汽車道」は、廃線跡の利用方法として卓抜ですね。小俣さん、水谷さん、提案者不在で失礼しました。どうもありがとうございました。(R.O.)
◎赤レンガ倉庫は結構コメントが厳しかったですね。特に外部空間への物足りなさが強いようです。一転して大さん橋は、未体験ゾーンという感じで評価も高い。さらにY.I.さんのコメントにもあるように大さん橋(未来ゾーン)から開港広場交差点付近(仮称レトロゾーン;カフェやレストランが並んでいる)までの経路はランドマークタワーや観覧車を横にみながらのルートで、ちょっとしたお店が出現しつつあり今後の展開が期待されます。今回は参加者や評価も少でした。やはり単体の建物のみばかりではなく、まちとの関係性の研究が皆さんの興味の大きい部分ではないかと感じました。(コーディネーター)


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