自由研究24・まちづくり企画14■上野・谷中企画2003.4の記録


teku-teku自由研究・まちづくり企画


■TEKU・TEKU自由研究24「近代建築の再生と活用(2)−上野の山の文化遺産と建築」
街づくり企画14「谷中での建物更新と住民の活動」評価結果


日 時:2003年4月5日(土)13:00〜17:30
コース:上野編 JR上野駅(集合)→上野アトレ→(パンダ橋)→上野グリーンサロン→国立西洋美術館→国立博物館→法隆寺宝物館→ 国際子ども図書館→東京芸大美術館→谷中編 吉田屋→アラン・ウェスト氏アトリエ→曙ハウス→高さ変更したマンション→スポーツ施設跡地→日暮里駅(解散)
参加者:14名◎溝辺正浩、梅田正代(コーディネータ)、石倉守、井手幸人、大竹亮、鎌原史英、栗原徹、櫻川惠一、杉谷知子、
野中るみ子、原久子、檜谷美恵子、シリル・マルラン、横堀肇


[参加者の意見]


デザイン(D)、使われ方(T)、周辺との関係(S)、文化的価値(B)の4項目をA〜Dの4段階で評価した。

1.JR上野駅(上野アトレ)
(D):AAAAABC=4.14、(T):AAAAAAB=4.71、(S):AAAABBC=3.86、(B):AAAABBB=4.14 総合:4.21
◆歴史的建築やあまり有効に使われていなかった部分をうまく再生しており、暗いイメージだった上野駅が明るく甦った。
◆明るくなり、駅構内の施設を使うようになった。また各施設が夜遅くまで営業しているのもうれしい。
◆更新前の上野駅を良く知っているため、その改修効果に感動した。建替と違う味を充分出している。
◆駅ビルとしては小規模だがレトロな雰囲気のロビーは良い。1階のところどころにある世界の風景のパネルは意図不明。
◆日本では珍しい行き止まり式線路の大空間を有する上野駅を保存・再生する試みは評価できるが、商業部分のデザインに品位が無く(安っぽく)、価値を半減させている。
◆東京駅や国立駅のようなきちんと顔のわかる駅が少ない中、上野駅の浅草側をクローズアップする今回の改修に共感する。


2.上野グリーンサロン
(D):AABBBBC=3.29、(T):AAAABBB=4.14、(S):AAABBBB=3.86、(B):BBCCCCC=1.57 総合:3.21
◆何の変哲もない事務所をファサードを工夫することでうまく周辺と調和させている。
◆(改修前に)何回も前を通ったはずなのに存在すら記憶にない。それが充分うまく使われるようになっている。計画、設計の大切さを確認した。
◆この建物の前庭にレストスペースが出来たことで、公園口からのアプローチが華やかになった。
◆当日は雨だったが、前庭部分にもテーブルが並ぶ風景は上野公園の新しい魅力となるのでは。
◆普通の事務所をこのように親しみやすい施設に改修したのは評価できるが、内部はほとんどフードコートで占められており、公園らしい余裕に乏しいのが残念。
◆食事する場所があまり無い公園口でうれしい存在にもかかわらず、ほとんど目立たない。


3.東京国立博物館 法隆寺宝物館
(D):AAAAAABB=4.50、(T):AAAAAAAB=4.75、(S):AAAAAAAB=4.75、(B):AAAAAABB=4.50 総合:4.63
◆軽やかだが落ち着きのある外観、池からのアプローチ、開放的なロビーと深遠なる展示空間(見渡す限りの透明な列柱に納まった仏像群!)、などモダニズム建築の最高傑作に属すると言える。
◆周辺の環境の配慮、熟慮されたディテール、仏像が浮き上がったような展示方法どれもすばらしかった。
◆プロポーションとディテールが美しく中の展示も幻想的、水の使い方や周辺との関係も素晴らしく、最近の建築としては最高のレベル。
◆開放的な外観と闇に包まれた幻想的な展示室、すっきりとした造作で「端正さ」という語がぴたりと合う。
◆シンプルで繊細。ゆっくりと、いつまでもいたくなる空間が心地よい。展示自体がもっと親しみやすければ、何度も訪れたいところ。
◆シンプル過ぎる気もする。
◆周りに年代毎の文化的施設があり、設計も難しかっただろう。法隆寺の宝物がいつでも見れるようになった意義は深い。


4.国際子ども図書館
(D):AAAAAAAB=4.50、(T):AAAABBBC=3.75、(S):AAAABBBB=4.00、(B):AAAAAAAB=4.50 総合:4.19
◆歴史的建築がガラスを主体とした新しい素材との相乗効果で見事の再生されている。歴史的建築を活かす良い見本になる。
◆既存建物を覆うガラス空間は外壁の煉瓦壁等にふれることができる気持ちのいい空間。
◆荘重でクラシカルな建物をそのまま活かし、外部に透明なガラスの箱を付加した手法は斬新で上手い。内部に本が少ないのと、隣の財団の建物が安っぽいのが残念。
◆表通りからはさほど「現代建築との融合」を感じないが、内部や庭園から見ると素晴らしさが良く分かる。
◆図書館利用というよりは安藤忠雄の作品見学者が圧倒的に多い。しかし、博物館見学で疲れた後に息するのに1階のカフェテラスが○。
◆図書閲覧室が小さく、図書館という名称とのギャップを感じた。
◆本のそろえ方が、「国際」「こども」にふさわしいかどうか疑問。このような地区でなければ存在意義もあまりないのでは。
◆40年前浪人時代、毎日通い、小説を読みふけった場所で感無量。場所のせいか、ちょっと使われ方がさびしい。大人コーナーも欲しかった。


5.東京芸術大学美術館
(D):AAAAABBCC=3.67、(T):AAAAABBBC=3.89、(S):AAAAABBBC=3.89、(B):BBBBBBBBC=2.78 総合:3.56
◆狭いキャンパスの中の穴蔵のような建築であり、奇妙なデザイン、迷路のような動線、併設された学生食堂、掘り出し物の多いミュージアムショップなどとても個性的で密度の濃い空間。
◆芸大の中の美術館におよそふさわしいものになっており、楽しい。なぜか食堂がぜんぜん使われていなかった。これは、デザインよりも「味」の問題だろうか。
◆学食と一般の喫茶店をうまく入れ込んでいる。内部の階段スペースも面白い。
◆1階のロビーのガラスのベンチがおしゃれ。
◆奇抜な外観は周辺に対しちょうどよい刺激になっている。中はむしろ普通。あんな大きな食堂があるとは思わなかった。
◆デザインは悪くないが、敷地条件の制約からか、美術館としてはやや中途半端。
◆外観のデザインが周辺にマッチしていない。


6.上野公園全体 AAAAABBBB 総合:4.11
◆新旧のすばらしい近現代建築が並んでおり、「日本建築博物館」のような場所。いままでは新築のお手本だったが、これからは各種の保全・改修、増築・改築、再生・活用手法のお手本となるだろう。
◆上野駅の改修、公園口のレストスペースの創設、歴史的な建物の再生等で一時失っていた明るさが出てき、どんどん魅力的な場所になってきている。
◆日本でこれだけの文化と緑と優れた建築が集まっているのは上野だけだろう。建築様式は極めて多岐にわたるが、緑の中に点在しているのであまり違和感はない。
◆動物園・博物館といった文化的なものが結集する一方で旅行者・外国人の行き交うところでもあり、いかがわしいものもたくさん。私としては本当にくつろげるところ。
◆ゆったりした空間が良い。
◆文化の一大テーマパークのような場所であるのに、上野の山全体が公園として認識しにくいのが残念。施設をつなぐ緑の一体感や、園内を通行する道路は歩行者優先とする配慮などがあると良いと感じる。
◆様々な建築があり、一日かけてゆっくりまわっても楽しめるところ、ただ、花壇や噴水が大きすぎて広場としての楽しみが少ない。
◆ホームレスとカラスがなくなって芝生がたくさんあれば公園という雰囲気でしょうが、現在は単に美術館と動物園のあるエリアという感じ。
◆ひさしぶりの上野の変貌に驚いている。丸の内や西新宿、汐留のように近代建築が競い合う所と一味違った雰囲気を出しており、貴重な空間、機能を提供している。50年前から親しんだ所なので、こうした更新手法はうれしい。


番外 旧東京音楽大学奏楽堂 ※当日は時間がなく、カットしましたが、何人かの方からいただいた評価を掲載します。
(D):AABB=4.00、(T):AAAB=4.50(S):AABB=4.00、(B):AAAB=4.50 総合:4.25
◆当時の建物をそのまま保存・開放し、パイプオルガンのコンサートまでやっているのは、すばらしいこと。かつてここで聴いたバッハは、日本の西洋音楽の初心を想わせてくれた。
◆今回は中に入らなかったが、こじんまりと暖かな雰囲気のコンサートができる空間。
◆時間がなく、ちらっとしか見れなかったのが残念。いつかは中で音楽を聞きたい。


【自由記入コメント】
●上野公園及び周辺
(1)上野駅から東京芸大までの保存・再生・新築の例で、うまく成功していると思うものは何ですか?(3つ選択)
(1)国際子ども図書館 6票 (2)法隆寺宝物館 5票 (3)JR上野駅 3票
芸大美術館 2票、西洋美術館 2票、旧東京音大奏楽堂 1票、国立博物館本館 1票

(2)様々な様式の建物からなる上野公園周辺を更に魅力的にするにはどうすればいいと思いますか?
◆個々の建物はすばらしいが、内部で完結しすぎているように思える。そこで、外でも楽しめるように、歩道を広げ、野外アート展や音楽会をやり、建築ガイドツアーもやってみたらどうか。
◆カフェやミュージアムショップは、入館しなくても入れるようになれば、目的の施設以外のところもまわって、公園内で1日楽しめると思う。
◆上野公園はかなり広いので、センスのいい飲食店などちょっと休憩できる施設がもっとあるといい。
◆日比谷公園のように、豊かな緑を活かした飲食店などができると良いのではないか。
◆少し元気のなくなっている都美術館周辺の環境整備と再生ができれば更に魅力的な場になると思います。
◆ホームレスとカラスを一掃し、低層の緑を増やした明るい公園にすること。
◆あまり全体計画を確定せず、その都度、周辺を見ながらデザイン、機能を考える「帰納的」手法が上野にふさわしいのではないか。
◆とくに何も。美は乱調にあり。
◆上野と谷中とをつなぐ、歩いて楽しい道があると、相乗効果で互いの魅力が増幅されると思う。

●谷中、根津
(3)住民の力で高さが抑えられたマンションと周辺の建物との関係をどのように評価しますか?

◆ギリギリ及第点。寺の山門と伝統木造家屋に挟まれた敷地であり、9階建なら破壊的だったろう。5階建(一部6階)でもボリュームは大きいが、控えめでシックな材質感が良く、1階の地域集会所も活用されていた。
◆歩道を歩いていて違和感がない、また歩道との関係を考慮した1階のデザインは素晴らしい。この場でこの高さは正解!
◆住民とデベロッパーの双方が納得した上で、高さが抑えられたことは非常に素晴らしい。欲を言えば、4階以上を少しセットバックすると街並みにもっと馴染んだと思う。
◆現地を見ないと、周辺との釣り合いが中々わからない。住民と業者のどちらも、ぎりぎり譲れない線なのではないか。
◆話には良く聞いていたが、初めて現物を見た。確かにあの程度が限界なので、住民の力を大いに評価する。
◆高く評価します。
◆住民運動側も企業側もそれぞれ上手にマスコミを利用し、活動を外に向かって上手にアピールして成功した例だと思う。高さも色もそれほど目立たなくなっている。


(4)スポーツ施設の跡地を(当面の間広場的な活用をするのが、現時点での区の方針)あなただったらどのように活用すればいいと思いますか?
◆谷中には広場が少ないので、自由に使える原っぱのままでいいのでは。崖の緑を保全し、舗装などの手は加えずに、住民で管理運営(受託)したらどうか。
◆区がせっかく買い取ったのだから地域の方々とワークショップ等を開催し、この地区にあった活用を考えていってほしい。個人的には住民の方々が憩える自然公園がいいと思います。
◆住民で良く話し合って使い方を決めることが重要だが、周辺は密集市街地なので、できるだけ建物をつくらない方がいいと思う。
◆子どもたちが思い切り遊べる場所。(水と地形と緑をいかして)
◆向かいのコミュニティセンターとの連携を考えて、あまり施設を作り込まない広場のような使い方はどうか。
◆保育園と老人ホームを併設した区のスポーツ施設。
◆中層の住宅、公共施設、小規模商業の複合的ブロックにする。もちろん一部は公園に。

●全体
(5)今回の企画に対する意見等
◆非常に充実した企画でした!雨は全く気になりませんでした。上野と谷中で2回分の内容が詰め込まれ、権威主義的な上野の立派な建築群から一転して庶民派の谷中・根津の路地裏に乱入し、頭の整理がつかない(?)ままに別れを惜しみました。特に、今回は「知られざる谷中」をたくさんご案内いただき、大収穫でした。石倉さん、梅田さん、ありがとうございました。(R.Ota-)
◆天候が悪かったのは残念でした。上野グリーンサロンのように既存建物にちょっとしたアイデアを盛り込むだけで、周りの雰囲気をこんなに変えてしまうんですね。これからの都市において改修のデザインの重要性をつくづく感じました。上野周辺にはまだまだ、魅力的な場所がありそうなので、幾つかの企画が出来そうですね。(Y.Ide-)
◆桜が満開なのに雨で残念でした。(R.Non-)
◆上野と谷中という違うイメージをもった地域が隣接していることがよくわかったが、それぞれに盛りだくさんなので2回に分けても良かったと思う。(T.Kur-)
◆上野と谷中の近さに驚きました。目的の催しのあるとき(しかも目的の施設のみ)しか足を運ぶことのない上野ですが、谷中も含め、1日のんびりじっくり歩いてみたいと思いました。カフェの梯子をしてみたいです。
あいにくのお天気でしたが、コーディネーターのみなさんありがとうございました!(F.Kan-)
◆街を見るとき、建物や活用の仕方を考えるといったことが皆無なのでこのような評価用紙にはあまりかけず申し訳ないです。上野はまさにA級からZ級の文化までいろいろそろったところ。成田に降り立った異邦人がとりあえず都心まで出てくると初めて目にする東京が上野にあるのでしょうか。アメリカ人画家のアトリエのように異文化がどんどん入ってきて、アトレのような商業施設もできて、何でもありになってきたほうが私はいいと思います。(T.Sug-)
◆大変良かったです。雨と風の中を歩いて充実しました。でもあれで天気が良ければ桜も最高でしたが!!(H.Yok-)


■コーディネーターより
雨風が強い中、皆様お疲れ様でした。私自身、上野公園は何か企画展示でもないと行かないところなので、今回の企画で改めてその特殊な地域性に気づいた次第です。隣接する谷中は、今回変わりつつある街に対して動き出した住民の力に注目した内容でしたが、途中立ち寄った、風呂屋を改装したギャラリーがあるなど、芸術が息づく街でもあります。この2つの地域の思わぬ近さ、つながりに対する驚きの声が参加者の口から出たのが印象的でした。
最後に、上野の山の様々な建築についての詳細な資料を用意していただいた井手さん、案内なしではとても歩けない谷中の魅力を教えていただいた梅田さん、石倉さんどうもありがとうございました。 (溝辺 正浩)


TEKU−TEKU 通信へ戻る

TEKU-TEKU HOME PAGE