自由研究30■東京のコミュニティ教会企画の記録


teku-teku自由研究30


日 時:2003年12月13日(土)13:30〜16:40(教会巡り)
                  17:00〜20:00(記念会合)
コース:根津駅⇒根津教会⇒聖テモテ教会⇒西片町教会⇒(バス)⇒本郷中央教会⇒弓町本郷教会⇒(バス)⇒早稲田教会(スコットホール)⇒出版記念会合(自由学園明日館)
参加者:◎溝辺正浩(コーディネーター)、大竹 亮、大木教子、大場明夫、桜井ひろみ、野中るみ子、水谷晴子、本庄 創、山根純一、平井志都葉(出版記念会のみ)、藤井正男(懇談会のみ)  以上11名


[参加者の意見]


1★東京のコミュニティ教会を巡るツアー
1.根津教会  評価:AAAAAABB 平均4.50
・ この日見た中で一番質素で素朴だが、木の暖かみをとても感じる教会だった。突然にもかかわらず快く見学をさせていただき、牧師さん自らのわかりやすい説明が、よりこの教会の暖かさを増しました。
・ 古い長屋が多い根津の街に洋風建築がなじんでいる。正方形で角に説教壇のある珍しいプランだが、牧師さんのお話からもコミュニティ教会の暖かさが伝わってきた。
・ 牧師さんとお話しできたことが印象深い。建物として素朴で落ち着いている。床下の改修工事については、地面からの湿気を防いだことになるだろうが、通気対策がどのようになっているかが気がかりだった。屋根はトラス構造のようだが天井は洋風の折上げ天井風となっており、屋根裏を隠している。
・ 静かな下町にこじんまりと建つ外観に何とも暖か味がある。内部が思いのほか広くて明るいのは、説教壇が角にあるせいか。牧師さんの説明もわかりやすく、教会を中心としたコミュニティの手応えを感じた。
・ 表通りから入った場所にある建物で町の集会場の様な感じ。牧師さんの説明が面白く、ためになった。
・ 牧師さんの話をお聞きできたのが良かった。
・ 小さな教会だが、いろいろな人の残そうという気持ちがちゃんと形になっていると思って、よかった。住宅地にふっと 現れるのがなんとも良かった。甲府から通う人がいるというのにはびっくり。
・ 明るくしゃれたコンパクトなデザイン。角に作られた祭壇(?)は集中できる。階段の入口ドアに作られた小窓が合理的。


2.聖テモテ教会 評価:AAAAAAAA 平均5.00
・ 本郷弥生の閑静な住宅街にたたずんでいる。控え目な外観からは思いがけず、内部は厳粛で壮麗な空間。ボランティアによる宿泊施設の運営も、非常に価値あること。
・ 前を通りがかることは何度かあったが、中の天井が高く、これほど立派だとは思わなかった。この教会で、病気のお子さんをもつ親御さんのための宿泊施設をされているというボランティア活動は、本当に素晴らしいこと。友人の子供が病気の時、地方から来ている親御さんたちは病院に宿泊施設が無くてとても困っているという話を思い出した。
・ 建物が素朴で気品がある。建物の維持管理がきちんとなされている。コミュニティが生きていることの証か。インテリアについては、天井はトラス構造の現しで、壁は木造柱を2本建ててこれもトラスを構成していると考えられる。柱2本のトラス構造のわずらわしさを石造もしくはレンガ造の袖壁風に仕立て上げている。全体としては、欧州郊外の小さな教会−石造の壁に木造の小屋組を架けた−をイメージした建物との印象。
・ シンプルな外観と内部の荘厳さが住宅地の教会として魅力的。2つの大学病院の近く、という立地ならではのボランティア活動のあり方に感動した。
・ ちょうど陽が当たっていたステンドグラスが見事。ボランティアのおばさんの熱心な説明にも胸打たれる。
・ 部屋を東大病院の患者の家族に提供等、地域密着活動に感動。しっとり落ち着いた家庭的な雰囲気。
・東大の学生のために作られたという経緯はあっても、今はまた別の役割(ぶどうのいえ)を持っていて良かった。
・ 教会の中にはいって、外から見る印象より立派でびっくりした。


3.西片町教会 評価:AAAABBBC 平均3.75
・ 表の17号線の喧噪が嘘のような礼拝堂内。これなら祈りに集中できる。
・ 国道17号(中山道)に面しながら、一歩中に入ると落ち着いた別世界が広がる。ステンドグラス越しの陽光が落ちる2階のボランティア活動コーナーは居心地いい空間。
・ 外観からは想像つかないほど内部が豪華な雰囲気で驚いた。このエリアの教会にふさわしい雰囲気。
・ ステンドグラスが美しかった。
・ 中規模ながらまとまっている.活気もあった。
・ 直接話を聞くことはなかったが、内部の様々なコーナーに地域に根ざした活動の様子がよくわかった。
・地域に根ざした教会という感じがした。外装が今ひとつ。
・ 正面ファサードはいただけない。町に対して肩肘を張っているように思われる。内部構造とは関係のない仮面をかぶっている。教会としての姿勢に反していると考えます。本郷中央教会の建物イメージを規模を小さくして実現したような感じ。


4.本郷中央教会 評価:AAAAABBB 平均4.25
・ 春日通りに壮麗なファサードを向ける本格派建築。内部には驚くべき劇場形式の会堂を擁する。道路拡幅事業が迫っており、今後どうなってしまうのか本当に心配である。
・ 中央会堂としての風格を持つ建物で威風堂々としている。正面のプロセニアムアーチが印象的である。2階席の迫り出し部分の持ち送り部材のデザインや、中央天井のトップライトとそのまわりの梁構造の表現に豪放さと細やかさが現れている。
・ 今回の教会の中で一番風格がある。内部の劇場のような造りも、多くの人が集う中央教会らしい。
・外も中も重厚で教会らしい感じはした。とはいえ、礼拝堂が劇場のようなつくりになっているのは面白かった。
・ 教会というよりは、公会堂。1階が幼稚園で2階が教会というのがおもしろい。都市計画道路にかかっているようなので不安です。今後の存続を強く望みます。この日の中で一番印象深い建物でした。
・ 二階席もあり、まるで昔の劇場の様な内部がすばらしい。
・ 講堂のような教会だった。
・大きいゆえに戦時中は利用された。がらんとしたちょっとさみしい感じ。


5.弓町本郷教会 評価:BBBBBBC- 平均2.71
・ 落ち着いた街並みに似合っている。向かいの大楠を残したマンション開発など、品位を保った一角。
・ しっかりとした建物との印象を受けた。内部を見ることができなかったのが残念。
・ 角地を活かした鐘楼(?)を持つ造りが良い。
・ 仏像風のモザイク壁画にリアルを感じました。中に入れなくて残念。
・ 今度は中を拝見したい。
・ 中を拝見できず、残念でした。
・ 中が見られなかったので、なんとも。

6.早稲田教会 評価:AAABBBBB 平均3.75
・ 本格的な建物との印象。ボーリズの存在を現わしている。コミュニティの確固とした集まり・活動があることの鮮烈な印象を受けた。
・ こじんまりとしているが外見は落ち着いた雰囲気でよかった。
・ 煉瓦の外装は美しい。下見に来るカップルが多く商売としてもうまくいっていそう。
・ 表からは分からず、中庭に面しているため、却って全面が広々としている。結婚式向けには少々無骨なデザインだが、良く利用されている。
・ 表に面していないので、知る人ぞ知る場所。すっかり商業ベースにのった結婚式場だったので他の教会と比べると評価が下がってしまう。
・ 教会のまわりを取り囲むようにビルが建っており、あまり雰囲気が良くなかった。
・ 建築デザインはそれなりのものだが、ビルに囲まれ、ブライダル専用(?)に近い商業化された状況に、私たちの想いは行き場を失った。
・ 設備が整っているのは、寒空にはやはりいい。エンタテイメント。


●コミュニティ建築としてのこれらの教会についてどのようにお考えですか。
・ いずれの教会も、美しいデザインが町並みに調和しており、地域活動の場にもなっていた。東京にもこうしたコミュニティ建築がたくさんあり、今も生きて使われていることに驚いた。ただし、信徒が遠方から通っていたり、道路拡幅にかかっていたりなど心配なこともあった。今後とも、人と建築の良き関係を具現化する場であってもらいたい。
・ 教会というのは、建物自体にも十分存在感があるが、そこで行われている活動やたずさわる方々に、精神的な面で大きな影響を与えているのだということがわかりました。
・ 教会の場合、集う人たちが限られていてはいるものの、街の印象を変えるものもあると思った。たとえば本郷中央協会は、あるとないとではまったく感じが異なると思う。
・ 全体的に街並みに良くなじんだ教会が多かった。今までは教会に対して閉鎖的な印象を持っていたが、実は門戸を開いて幅広い活動をしているところが多いことが分かった。
・ 教会内部は礼拝堂だけだと思ったが集会室みたいなスペースがある教会が多く、案外多目的に使われているかも知れないと思った。
・ 信徒だけで建物を維持するのはなかなか難しいのが現状ということを痛感しました。
・ 幼稚園時に教会になじまれた方が結構いるのですね(私も)。これからの宗教は(オウム以後)現実にいかに対処していくかが課題。元サラリーマンの根津教会牧師に期待したい。


●今回の企画についての感想
・ とにかく内部を拝見できたのが嬉しかった。外見は比較的新しそうな建物でも中は古めかしい教会が多く、それらのデザインが醸し出す雰囲気もまさに心の拠り所としての役割を果たしているのだと感心した。 (J-Yam.)
・ コーディネーターの尽力により、教会の方のお話が伺えたことがとても良かったです。外から見るだけと、中にはいって話をお聞きするのとでは、大きく違うということを実感しました。ありがとうございました。 (H-Miz.)
・ 時期的にもグッドタイミング企画!多くの教会を小→大規模順に回れて、かつ、各教会のお話しも聞けていろいろ勉強させていただき、コーディネーターの尽力に感謝。 (H-Sak.)
・ 急な企画だったのでしょうが、内容がとても良かった。発案者、企画者に感謝します。 (A-Oob.)
・ 思ったよりもたくさん小さな教会があってびっくりしました。今後はもう少し気をつけて見て行きたいと思いますし、コミュニティとの関係も考えて行きたいと思います。 (N-Ook.)
・ 鈴木(巧)さんの講演会前の大変有意義な企画でした。また、西海の教会群は、ただでさえ人口が少くその中での信徒による教会の維持はなかなか難しいことだというのがより強く実感しました。今回の教会ツアーは、人数が少なかったので、ぜひもう一度Teku-tekuとして開催したい企画です。                    (R-Non.)
・ 自由学園明日館での「西海の天主堂を訪ねて」出版記念会合にあわせて急遽の企画でしたが、東京旧市街にひっそり残り、活動を続けている教会群を知ることができた貴重な企画でした。特に、その場でお願いして内部を拝見し、お話やご案内もしていただくなど、今までのteku-tekuにはない新境地でした。溝辺さん、ありがとうございました。(R-Oot.)


●コーディネーターより
当日はコーディネーター自身が思いもよらない展開になり驚いております。下見に行った別の教会で「信者のお祈りのために常に開けています。」という所もありましたが、一見してお祈りに来たのではないとわかる、首からカメラをぶら下げた男の、突然の見学の申し出に快く応じてくださった、教会関係者の皆様に厚くお礼申し上げます。
それでは、企画書を出した後に新たに分かったことについて、若干補足します。
根津教会:東京都の文化財指定。数年前まで会社員だったという牧師様は、キリスト教や教会のあり方、信者との関係などについて、信者ではない我々にも分かりやすく解説してくださいました。おかげで幸先の良いスタートとなりました。
聖テモテ教会:設立はちょうど100年前の1903年。当時帝大の職員や学生の信者のために作られたそうです。戦災に遭い、現在の建物は戦後すぐに再建されたもの。当初の目的から学生用の宿舎(寮)が併設されていたが、現在は遠方から入院しに来ている子供の親のための宿泊施設に。母親が子供に手料理を出せるようにと調理室が使える等、細やかな配慮が伺える関係者の話は感動的でした。
早稲田教会:現在はブライダルホールにとりこまれている状況で、下見のカップルも多かったのですが、私が下見の時は恵まれない子供達のためのチャリティバザーが催され、会場が礼拝堂の中から外まで溢れんばかりになっていました。当日、このような利用についての話をしなかったのはコーディネーターとして失敗でした。



2★コミュニティの中の歴史的遺産を語り合う集い−「西海の天主堂を訪ねて」出版を記念して−
・ 自由学園明日館という歴史的建物を再生した会場で、ホールでの講演会、食堂でのディスカッション+パーティと、テーマにふさわしく厳粛でありながらも親密な雰囲気でした。スライドを多用した鈴木功氏の講演からは、西海の天主堂群の風光明媚な立地や格調高い外観、敬虔な内部空間などの迫力とともに、氏の切なる思いが伝わってきました。また、パーティでは司会に指名されて、参加したteku-tekuメンバー全員で前に出て、東京の教会めぐりの報告もさせていただきました。「人と建築の良き関係」について思い至らせてくださった鈴木さんに、感謝します。 (R-Oot.)
・ 今回はとりわけ私好みの企画だったにもかかわらず、都合で夜の明日館のみの出席になった。『西海の天主堂を訪ねて』は誠に精緻な労作であり、十数年前に実際に西海の天主堂を数多く訪ねたことのある私にとっても、次回西海に赴く際には必ず鞄に入れていきたい本である。一体どんな方が書かれたのか興味津々だったので、著者の鈴木功氏にお会いできたのが何よりも嬉しかった。本当に素晴らしい本ですので、皆さんも是非お読みください! (S-Hir.)
・ 建物保存の講演会、そして落ち着いた方々に相応しい場所でした。えらい方々の集まりだったので、ちょっと場違いだったような。 (R-Non.)
・ 「離島」と「建物保存」がキーワードとなり、遅れ馳せながら「西海の天主堂」に興味を抱き始めた私にとって、今回の会合は本当に充実した内容でした。西海の天主堂群については、最近は紹介パンフレットができたり、教会巡りのツアーが組まれたりといった動きがあるものの、まだ一般的には知られていない状況です。講演では、著者が10数年にわたり訪ね歩いた教会堂のスライドを中心に、建物についての解説だけでなく、建築当時からの経緯、数多くの教会を手がけた一人の建築家の存在、そして現在の危機的状況など、多方面に渡り熱のこもった解説をしていただきました。
その後のパーティでも、参加者から「保存」を中心に様々な話を伺い、終始和やかな雰囲気でありながら中身の濃い
集いでした。個人的には、自身の職場での元お歴々が大勢いる中で、いきなり前に出る羽目になったハプニングもあり
ましたが、いろいろと勉強になりました。著者の鈴木功さんと、この会合の主催者の方々に感謝します。 (M-Miz.)


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