まちづくり企画29■川越企画2004.4の記録


teku-tekuまちづくり企画29


テーマ:普段着のきものがたり−川越織物市場の活用を考える−

日 時:2004年4月25日(日)11時〜16時30分頃

コース:川越駅前〜クレアモール〜鏡山酒造〜川越織物市場*(建物公開+むかし着物展示会)〜大正ロマン 通り<昼食>〜カトリック川越教会*〜川越市民会館*(銘仙の語り部・木村和恵さん講演会)〜太陽軒*〜菓子屋横丁〜蔵の町一番街(*建物内部も見学)
参加者:8名
◎鎌原史英#、新井英子、大竹 亮、澤田初穂、萩原晶子、山中洋子、弓削孝浩#、脇野真澄(#着物で参加)


当日の感想●やはり川越は遠い! 自身が着物で行くには勇気のいる距離ですが、こういうイベントは見ていても楽しいですね。銘仙の位置づけが自分の中で再認識できたのもよかったです。また、一人では決して見ないだろう部分を歩くことができたので良かったです(酒屋、教会など)。偶然とはいえ、太陽軒の内部をじっくり見せてもらえたことも良かった。今後、市が取得した土地がどのように活用されていくのか楽しみなところです。
川越織物市場の今後の活用アイデア●最近はとくにブームのせいもあるのかもしれませんが、「着物」をキーワードにした活用が一番似合っているように思えます。あれだけ着物をお召しの方が集まる場、イベントも珍しいのではないでしょうか? アトリエ、ギャラリーもありかもしれませんが、細かいことを言えば、着物で川越を訪れた人が使える便利な場所・・・ちょっと着崩れたのを直すとか着付けができるスペース(ホテル以外ないので、あると便利)。そういった具体的なお役立ち機能があれば遠方からでも「着物で歩く川越」ができるのではないかと思います。川越は和菓子屋さんも羨ましいくらい多いので、お茶とか点てられる場もあったらいいですね。(E/A)


当日の感想●3年ぶりの川越を堪能しました。当時、工事中だったマンションの竣工が目につきましたが、クレアモール商店街は以前にも増して活気がありました。気がかりなのは旧鏡山酒造の今後。織物市場を保存した住民パワーで、再生できればと思っています。一番街や菓子屋横丁など、観光客を意識した側面もありますが、やはり城下町だからでしょうか? 小江戸川越、非日常を楽しむことができました。どうもありがとうございました。
川越織物市場の今後の活用アイデア
●建物は廃屋と言わざるを得ないが、「むかし着物の展示」に「大勢の着物をお召しになって来場された方」が花を添え、市場は、味わい深く、タイムスリップしたような、いい雰囲気が出ていた。たとえ景品目当てでも、今回のように着物を着た方が集まるイベントは、しっくりくるのでは? 講演では、講師の木村さんは、銘仙着物の収集を始めてわずか7年とおっしゃっていましたが、一つのことをとことん追求し、体験したことに基づく話はひきつけられるものがあり、非常に楽しめました。銘仙を追っていくと、日本の戦前戦後の歴史にぶつかるということが、妙にひっかかりました。(M/W)


当日の感想●銘仙をお召しの方々をあんなにたくさん見たのは初めてで、また講演も大変勉強になり面白かったです。着物は日本の民族衣装でありながら、日本人が着ることは少なくなりました。でも、潜在的には「着てみたい」という需要は結構多いのかもしれません。
荒川区でも先日江戸更紗の工場が廃業しました。東京は染め物が多いのですが、江戸更紗の生産現場はほとんど残っていません。というのも、今回無くなった型染めの工場は、生産工程でたくさんの職人が関わっており、経営的にそれらを維持できなくなったようです。手描き更紗は1人でできるのでまだ残っているのですが、型染めは事実上消滅してしまったようです。
みんなが着物を着れば残ったのか、値段が安ければみんなが着たのか? 着物の値段は不透明です。更紗も生産工程を知れば、値段が高くても頷けますが、それに見合った手間賃を職人がもらっているのか?消費者は末端で、正当な価格で着物を購入できているのか? 民族衣装を残すために、生産者も流通業者も消費者も真剣に対応策を考えなければいけません。
川越織物市場の今後の活用アイデア●自分の経験からしかものが言えないのですが、あのような場を見てしまうと、子どもから高齢者まで交流できる場にして欲しいなと思います。あのようなシチュエーションなら、地域の歴史や昔話を語るのにもってこいだし、子ども同士の集団生活体験の施設としても既存の公共施設より雰囲気があります。お泊まり会なんかしたら面白いでしょうね。また、給食配給所のかまども魅力的です。あそこで火を炊いたら近所迷惑で怒られるでしょうか? でも整備しておけば、災害時に活用できますし、子どもたちにガスや電気を使わないで、自分のご飯をつくる経験をさせてあげることができます。私が担当していた通学合宿にはぴったりです。よだれが出るほど、魅力的な宿泊施設です。(Y/Y)

当日の感想●とても楽しい休日になりました。着物に疎い(縁遠い)私でも、興味深く関心が持てました。また、古い建物と着物が良く似合うことは驚きでした。銘仙というものの力かもしれません。そして、建物の保存運動から「普段着のまちづくり」への転換点を感じました。建物見学と講演会の後に、大勢の観光客で賑わう蔵の町一番街と菓子屋横丁を歩きましたが、こうした観光面での(経済的・文化的な)成功が市行政の歴史的景観保全の方針につながったのだと認識しました。今後のまちづくりが楽しみです。また、草野さんご夫妻や荒牧さんをはじめ、川越のまちづくり関係の方々に再会できたのがうれしかったですし、鎌原さんと弓削さんの着物姿を初めて拝見し、珍しい(?)てくてくでした。
川越織物市場の活用方法●前回来た時に、織物市場の記憶を活かすような活用方向(着物関係、交易関係)がいいと思ったので、今回の試みはうれしい限りです。昨年のteku-teku京都企画の四条京町家では、保存町家で着物展示会が行なわれていましたし、関門企画の長府城下町では、古民家が古着屋兼食事処になっていたのを思い起こしました。また、今後の改修方法についても、桐生・有隣館のような行政主導から、津山・バール横丁のような民間主導、近江八幡郵便局のようなNPO主導、さらには、米子・笑い庵のようなセルフビルドまで、teku-tekuで訪れた事例だけでも様々ですが、貴重な産業遺産としての価値を見据えた本格的な取り組みを期待します。
※ちなみに、5月8日から旧街道ウォークで川越街道を歩きます。江戸(日本橋)から小江戸(川越城下町)まで 数回予定しています。こちらの方へもどうぞ!(R/O)



■織物市場再生活用に関して
1.現在の織物市場の状態に関して
・現在の織物市場の建物の状態は皆さんご存知でしょうが、耐用年限をはるかに過ぎていると考えられ、台風等の災害により倒壊の可能性が高いものと考えられます。細部を見ると前住者あるいは土地を確保した後、市が行ったのかも知れませんが、木造構造部材がつぎはぎにされており、部材同士が補強金物によって接合され構造体が維持されている状態で、足場パイプによって補強されていますが、あまり長く今の状態は維持できないものと考えられます、この点、早期の再生が求められます(3年後がメドとのことですが)。


2.管理の問題に関して
・現在は居住者はなく無人の状態だと思いますが、周辺地区の有志の方の監視の目があるとは言え、安心・安全・防犯・防災の面からは市街地の一画に無人の廃屋群があることは問題です。今回、市の管理人が付くとのことですが24時間監視が行き届くのでしょうか、課題点であると思います。


3.再生に要する資金計画の問題
・現在の状態の建物を比較的早期に再生するには、相当な資金が相応の時間的限界を伴って必要になると考えられます。国の事業手法を活用して補助・助成を得たとしても、当該自治体の負担が必要になります。川越市の場合は分かりませんが、一般的には地方自治体の財政事情は逼迫しており、これに期待することは今後あまり期待できない困った状態です。
・善意の個人献金の積み上げにより再生資金を得ることが出来るかというと、とても困難な状況にあると思います(再生に要する大金は個人献金ではとても積み上がらない)。


4.それではどうしたらよいか
・公的資金導入が困難な時代、個人の善意の献金では資金計画が成り立たない、となれば民間資金の誘導・活用ということになります。市民活動からはアレルギー反応があるとおもいますが。しかしそれにしても現下の経済状況の中で織物市場再生に投資する民間企業は存在するでしょうか。企業の文化事業にしても利益を産まない投資はあり得ません、そのことを念頭において企画を練り実際に自ら動いて企業に働きかける必要があります。待っていてはだれも着目しない、一部のオタッキーな人達の趣味の問題に萎縮してしまいます。
・現在の織物市場を体験学習工房・職人工房・市民コミュニテイーサロン等実生活に活かされたスペースにすることは大賛成です。しかし、都市観光という要素は大事であり排除しない方が良いと考えます(趣味の良い大人の都市観光施設、子供でも良い)。今や都市観光は都市の有力な経済のベースとなる産業とまでいわれています。東京には国際的に見て都市観光と呼べる歴史の厚みを伴った魅力ある場所がほとんど存在しないのが弱点と言われています。川越にはそれがある、この点に着目し街を再生創造していく必要があると思います。決して博物館的見せ物にしたり、チャラチャラした観光地にするという意味ではありません。
・民間誘導の参考例ですが、現在、国の重要文化財である日本橋上空に首都高が架けられ地域の分断・景観・イメージを台無しにしたため、日本橋・室町一帯の江戸時代から繁栄した地域が経済的地盤沈下を起こしています。これを何とかしようということで地元某大手不動産会社が地元の有力老舗等と連携し、首都高を撤去し水辺を取り戻し、明治・大正・昭和初期の街を再生し現代の再開発と一体的な街並みを作りだす文化特区(歴史的職人文化と近代的文化の融合した)を構想しています。強力な哲学と自ら繁栄するためには他者とも連携しなければならないという社会性を持った企業意識があります。
・このような社会性を持っている企業は増えているはずです。織物市場再生の意図を明確にし、企業にとっても魅力ある企画をたて、プロパガンダし動くことが共鳴してくれる企業獲得のため大切だと考えます。
・もっと書きたいけれど、仕事にさしつかえるからここまで。どう思いますか?(H/S)



■コーディネイターより
午前中からの川越まち歩き、大変お疲れさまでした。そして、ありがとうございました。当日は、午前・午後あわせて200名近い方が織物市場と講演会に訪れてくださいました。
川越では、マンション計画が契機となって、まちなみ保存に向けた活動や制度づくりなどの歩みが進んできていると言えますが、「織物市場の会では、考えられる限り多彩な住民参加活動を実践」されています(市場の会で奮闘された方の言葉をお借りしました)。織物市場というハードの保存問題からソフトとあわせた活動へ移行している今、この「ふだん着としての・・」イベントは予想以上の効果があったのではないかと思っています。織物市場を訪れてくださった方々が、まちに出て散策したり挨拶を交わしたり、まちの風景となって飾らずにまちを楽しんでいるように感じられました。織物市場は、5月3日にも公開していますので、興味のある方はどうぞ遊びにいらしてください。(F/K)
川越織物市場の会 http://www.kawaichi.com

川越織物市場の建物
建物に飾られた着物(むかし着物展)
建物内部(むかし着物展)
川越織物市場全景

 


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