まちづくり企画30■日本橋・人形町企画2004.8の記録


teku-tekuまちづくり企画30


 「都市再生と都心居住/日本橋〜人形町へ」

日時◆2004.8.21(土)14:00〜17:00
コース◆日本橋高島屋〜COREDO日本橋(東急百貨店跡)〜三越本館+新館(工事中)〜日本銀行〜三井本館+新館(工事中)〜「伊場仙」訪問〜人形町界隈(小菊通り、甘酒横丁、水天宮)
参加者◆栗原 徹、井手幸人、梅田正代、溝辺正浩、千川 明、大竹 亮、石垣曜子<コーディネーター>(以上懇親会も参加)、鎌原史英、高橋 史、脇野真澄+陽子、庄山典子、小林正樹、大場明夫、水谷晴子、横澤久美子 計16名


[参加者の意見]


1 日本橋界隈(高島屋・COREDO日本橋・三越本館・日本銀行・三井本館)【評価ポイント3.28】


A:レトロな雰囲気の特徴ある外観など、日本橋の歴史の厚さを感じさせる界隈だと思います。ただ、’江戸’時代の賑わいの地であったことを街並みの中で彷彿させるものが、工事現場の仮囲いしかないということが少し寂しく感じました。
A:日本の様式建築を一同にみることのできる貴重な場所です。COREDO日本橋の低層棟の開放かれた屋上空間が今後どの様に活用されるか興味深い。
B:超一流の銀行や百貨店などが並び、名橋・日本橋やクラシックな建築、職人芸を誇る老舗など歴史伝統の重みもあり、東京の都市格を高めている。丸の内のように業務に特化せず、銀座のように商業に特化せず、新宿のように巨大でなく、広い舗道を快適に歩いて回れる街でもある。コレドや三井新館の話題が人を呼び、伊場仙のような仕事が知られるようになると面白い。
B:デパートの中は、何度も行ったことがあるが、街としては、「どこを歩けば良いのかよくわからない、老舗のお店には入りにくい」という印象があった。今回の街歩きで、よさそうなお店が発見できたので、ぜひまた訪れて、掘り出し物をさがしたいと思った。
B:デパートがいくつもあるが平日の方が賑わうオフィス街。休日は閉まる老舗の街のイメージが強かったが、開放的なコレドができて身近になった。
B:三井本館や日本銀行をはじめとする重厚な建築の集積に、COREDO日本橋など新たなインパクトが生まれたことで、街が大きく変化しつつある。三越新館や三井新館ができた後にぜひ見に来たい。
B:やはり、重厚な老舗百貨店と銀行のビルの存在感は大きい。コレドでは、一緒にあるのはどうかと思うような商品の陳列と混在した臭いに閉口してしまいました。
C:<高島屋 D>吹き抜けがあり、ゆったりした空間。外装やエレベーターに見られるレトロな雰囲気。商品の展示が空間を殺しているように感じます。<CORED日本橋 C>COREDOは1回の階高が高く入った瞬間には開放感がありました。しかし、空間を生かしていないことによる物足りなさも感じました。店舗もここには面白いものもあるのですが、館全体としてのコンセプトを感じませんでした。授乳室があることにユニバーサルデザインを、エスカレーターが梁に接続されておらず安全への配慮を感じました。アネックスの公開空地は今後どうなるか。今のところ殺風景という印象を受けました。「特定街区」という都市計画で生み出した公開空地を奥に作ることは趣旨に反しているように思います。知る人が知るでは居住環境の向上に資する公開空地の意味が少ない。椅子に座り足を投げ出してゆったりしている人がいました。白木屋の井戸のことが復元保存されているのは、江戸の歴史を留めることに意味があると思います。<三越本館 C>銀座三越のライオンのほうが好きです。<日本銀行、三井本館 B>日本銀行の壁面のレリーフが印象的です。それぞれに意味があると聞いています。それらを簡単に説明する案内がほしいです。この一角は、100尺規制での軒線が整い、重厚なファサードでいい雰囲気を醸し出しています。<総合>銀座通りなどここの建築物を見るとデザイン的に苦心しているものも見受けますが、通り全体としては歩いて楽しい景観になっていないことが残念です。景観法が成立したことが都市景観への後押しになるといいのですが。歴史的建造物の容積率を移転している巨大なビルには違和感を感じます。容積率移転、住宅を建築する場合には最大1.5倍までの容積率を付与するなど、都市計画がますますわかりにくくなってきています。容積率移転は頭ではわかっているのですが、銀座通りに出現した巨大ビルを見て、安直な容積率移転については大いに疑問を感じました。


2 人形町界隈【評価ポイント 4.42】


A: 初めて、人形町を歩いた。人形町は奥深い街だと思った。食べ物系はどれもおいしそうだった。次回、もっとゆっくり見てみたい。
A:特に甘酒横丁のような商店街があると生活感があり、空洞化の問題はあっても比較的住みやすいのではないかと思う。
A:日本橋にとても近いにも関わらず、ヒューマンスケールの賑わい空間や風格のある老舗の建物が残っている。非常に面白い街であるとともに、生活もしやすそうであり、住んで見たい街。
A:昔から変わらぬ下町情緒が溢れている路地の小道などにホットする心地良さを感じました。アーバンライフにしか慣れ親しんだことがないはずでもそう感じるのは、きっと日本人の遺伝子が育んできた感性なのだろうかと思ってしまいました。
A:河川の埋め立て地の木密通りを歩くぞくぞく感、観光的商店街を歩く旅行気分、路地裏に残る花街通りで感じる風情など様々な感覚が味わえる要素がコンパクトに融合し魅力的な場の雰囲気を醸し出している。
B:伝統文化と現代の都市機能、新旧の建物が併存し、商業、業務、住居が程よくミックスしたヒューマンな街である(ヨーロッパの都市の下町を想起させる)。相次ぐ高層分譲マンション供給と、路地の民家改修による飲み屋の増加が対照的だが、それも多彩な要素が入り混じった活力あふれるこの街の魅力か。
B:路地巡りがとても魅力的だった。街の奥深さに驚き、入ってみたくなるお店も多くて、わくわくしました。
C:甘酒横丁は明治座の門前町という印象があります。あまり生活の匂いがないかな。明治座の少し先の浜町公園では以前に行ったときに、子供たちが相撲の稽古をしていました。緑道に人がいないのが気になりますが、緑道の先が生活感のある住宅街になっています。浜町の再開発ビルでもそうでしたが、住宅開発が目立っていることに驚きました。しかも、手が届きそうな価格であることが2007年問題の行方を不安にさせます。最近の銀行の統廃合で、駅前の銀行がコンビニに変わっています。コンビニとファミレスの街が続々出現するのではないでしょうか。狭い路地裏の空間は中央区のああいう場所なので郷愁を誘うのですが、もっと狭い空間に小さな住宅がひしめいている地域(路地ではなく)をどうするかということが頭から離れない状況ですので、落ち着きません。あのような路地空間を否定するものではないのですが、そのよさを残しつつ、安全で快適な空間にしていくことの知恵がありましたら御教授を。


3 自由意見
◆老舗「伊場仙」訪問の感想
・このような伝統的な職人仕事が継承され、現代の都心で店を営んでいることに、日本橋の粋と奥行きを感じた。このようなお店がいくつも存在感を出していくと、街が変わっていくだろう。
・日本の中の江戸というより、世界に向かっている江戸 というお話が印象的だった。日本橋のお店というと、敷居が高くて入りにくいという印象があるので、こういう方のお話をお聞きする機会がもてたことは、貴重だと思った。
・実際に中に入って話を伺うと、敷居の高さは感じず、デザインや値段も自分に合うものがある。あれこれ見るのも楽しいところなのだが、きっかけがないと入りづらい。それには個々の店だけでなく、一帯の雰囲気作りが重要だと改めて感じた。  
・江戸時代からの街の歴史や成り立ち、江戸と京都の団扇のちがいなどの話が聞けて、とても面白かった。この周辺はほとんどビルになってしまったが、伊場仙のような老舗も残っているので、江戸以来の歴史や伝統を生かした、個性あるまちづくりができるといい。
・かつての様子や職人さんの実状など、大変興味深いお話しでした。江戸団扇は、初めて知りました!今、通り沿いにほとんどお店がないため、非常に厳しい状況とは思いますが、これからの変化を想像しながらお聞きしました。
’扇子’は日本人繊細な技術と風流な日本文化の象徴だと思いました。扇子の需要が海外において高く、’江戸’への関心が高まっているという話の中で、後継者がいないことや、老舗商店街の沈下の現状についてとても残念にかんじられました
・オフィス街に、こうした老舗があるとはビックリしました。スペイン・オランダ等海外とのネットワーク化、海外客の確保等、この地区の老舗による新たな事業が起爆剤となり、堀江町(現:小舟町)の新たな街のイメージが形成されていくといいですね。
・老舗「伊場線」で話をうかがえることを楽しみに参加させていただきました。職住同一だったものが、関東大震災で職住を分けたというのは印象的でした。盆栽村、十条の同潤会住宅関東大震災の与えた影響はものすごく大きかったのだと再認識しました。扇が3枚の紙で構成され、その間に骨が入っているというのは聞いたことがありましたが、その中の和紙が高知で作られていて、その紙を作れるのは1軒。日本の伝統的な技術がどんどん消滅していくことの危機を改めて感じました。昭和通に和紙の資料館がありました。2店だけでは町おこしには厳しいのかもしれませんが、和紙の資料館には是非行ってみたいと思います。北区飛鳥山にある紙の博物館も一見の価値があります。(小林)


◆今後の日本橋、人形町界隈の街について
・東京の中で、機能的にも空間的にも超一流の歴史伝統文化を誇り、もちろん今も現役の街である。フォーマルな業務中心の日本橋とカジュアルで居住の多い人形町が上手く組み合わさって、古いものを大切にし、ヒューマンスケールの街並みや空間を守り、都市の価値の原点を極めてもらいたいものだ。
・マンションが乱立していく様には、ちょっとがっかりしました。商売をしながら生活している人達が、ずっと住み続けることができるような町であってほしいと思います。
・日本橋界隈は地上は高速道路で二分され、地下も川のためにつながらない日本橋界隈をまとまりのある地域としてとらえるのは実は難しい。シンボルであるはずの日本橋付近が裏手のように暗くなりがちになるのを抑え、両岸をうまくつなげる人の流れを生み出せば、もっと多くの人が来るようになるのではないか。
・特に人形町には江戸の風情が色濃く残っているが、近年マンションが次々と建設されて、街が変わりつつある。なんとかして、今の街の雰囲気やコミュニティが残るまちづくりが必要だと思う。
・高速が通過している現状では望むべくもないとは思いつつ、やはり、日本橋は美しい川と橋の風景を取り戻すべきだと思う。人形町は、今のヒューマンな風情を持ち続けて欲しいと思いました
・’日本橋’から連想される’江戸’の情緒が、現状では、街並みの中にあまり見うけられないと思います。(あくまでも観光者としての視点ですが…)COREDOのような複合施も日本橋界隈にあってレトロな雰囲気をまったく取り入れていないデザインであったことが残念だったように思われます。欧米文化とは違う日本らしさを積極的に取り入れて、’江戸の味わい’を視覚的に楽しめる街に’日本橋’がなっていってくれたらと思います。
・特に人形町は路地裏文化が今も生きています。大きな通りから一筋入ったところに残るこうした文化は、新たに創ろうとしてもできるものではありません。こうした路地裏文化をうまく残し、地区更新ができるといいですね。


◆今回の企画に対する意見など
・日本経済の中枢としてエスタブリッシュされた日本橋と、江戸情緒色濃い庶民的な人形町とは対比であるはずだが、歩いているうちにいつの間にか移ってしまう巧みなコース設定であった。都市再生の圧力が、伝統あるこの街の持ち味を上手く伸ばすように活かされることを何より願うものである。石垣さん、ありがとうございました。(大竹)
・日本橋の水路上の路地には、驚愕いたしました。突如、人形町の風情が現れたのも
びっくり。コーディネーターのコース取りは、見事だと思いました。(水谷)
・コーディネーター初挑戦とのことでしたが、二つともかなり深いところまで案内していただき、新たな発見もあって楽しい企画でした。今後もまた企画してください。(溝辺)
・日本橋から人形町まで、比較的狭いエリアでありながら、各々の街の性格がまったく違うのが面白かった。特に水路跡の路地空間はとても印象的。コーディネーターの石垣さん、ご苦労様。そして、いい話をしてくださった伊場仙の吉田さん、ありがとうございました。(栗原)
・ほとんど訪れる機会がなく、イメージばかりであった日本橋・人形町界隈でしたので、発見が多く、とても楽しく歩けました。これからどうなるのか、気になります。(鎌原)
・今回の企画で、日本橋界隈と人形町界隈の雰囲気の違いを改めて感じました。古き良き時代の情緒が現在にも息づいているかどうかという’街のぬくもり’の感覚が対照的に肌に感じられ、とてもおもしろかったです。ありがとうございました。(庄内)
・日本橋、人形町界隈は点では見ているのですが、今回のように面的に歩いたのは初めてです。ちょっとした旅行気分も味わえた楽しい街歩きでした。石垣さんご苦労様でした!
(井手)


・コーディネーターより:長時間のウォーキングとなってしまい、皆様お疲れ様でした。日本橋、人形町ともに建物や景観という意味では統一されたイメージも薄くて課題が多いですが、そこに根付いている地元の人々の活動には古くから根付いている活気や勢いが感じられる街だと思います。コース以外にも面白い場所はたくさんありますので、ぜひまた足を運んでみてください。(石垣)

COREDO日本橋

 

日本橋のたもとにて

 

日本銀行

 

伊場仙の吉田社長

 

人形町(小菊通り)

 

水天宮

 

 


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