自由研究39■東久留米・清瀬企画2005.10の記録


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東京ハウジングコレクションその5

「東久留米・清瀬の郊外居住団地を巡る」の記録

日 時●2005.10.15(土) 13:40〜18:00頃
コース●西武新宿線・花小金井駅〜多摩湖自転車道〜コーポレート花小金井−(バス)−滝山団地(センター地区+緑道ネットワーク+戸建地区+近隣公園+集合住宅地区)−(バス)−清瀬駅北口再開発+清瀬駅前ハイツ−(バス)−志木街道ケヤキ並木〜グリーンタウン清戸(タウンハウス+保存樹林)〜東久留米団地(建替え住棟+樹林地再整備)−(バス)−西武池袋線・東久留米駅
参加者●10名
石田頼房、大島英司、栗原 徹、千川 明、野中るみ子、原 久子、古里 実、溝辺正浩、横田宜明、◎大竹 亮(コーディネイター)
※石田頼房氏には、かつての北多摩都市計画空地地区指定の計画と経緯について、レクチュアいただきました。



【参加者の評価】

評価項目●S(周辺との関係)、K(敷地内の環境)、D(デザイン)、R(生活利便性)の4要素と総合評価。


1◆コーポレート花小金井(特別借受賃貸住宅 30戸/1990年)
評価 S:2.50 K:3.00 D:2.25 R:3.75 総合:2.75(ABBBBBCC)
総合A●駅に近い立地、ヒューマンスケールな空間、近くの緑道など、居心地が良さそうな集合住宅。
総合B●駅に近く、緑道など周辺環境はよい。線路側に建物があり、中庭は静か。
総合B●街路型、とはいえないが、道路から入った奥にゆったりとした空間がある。
総合B●こじんまりとまとまっている。
総合B●空き室がある現状を見ると、制度も併せて役目は終わった感じがする。
総合C●借受という制度を使っているが、住宅そのものは当時の公団住宅としては、ごく普通。
総合C●バブル期の建設であることから、地主さんの住宅経営がうまくいっているのか気になった。


2◆滝山団地(土地区画整理事業 80ha,3200戸/1968年)
評価 S:4.25 K:4.75 D:3.25 R:3.75 総合:4.25(AAAAABBB)
総合A●バス通りに商店が賑わい、直交する緑道が住宅地を貫いてネットワークしている。周辺がやや殺風景だが、バス便が多方面へ非常に多く、諸機能も充実しているので、安心して楽しく生活できそうな郊外居住地に成熟している。
総合A●団地を貫通して伸びる緑道が、充実した商業施設とともに地域の核となり、軸となっている。
総合A●緑道、特に後半歩いたグランド脇の緑道は、緑のボリューム感があってとてもよく感じた。
総合A●どこにでもある団地だが、緑の多さや緑道が評価を上げている。40年経った今、高齢者の街になっているのでしょうが、この街の中ですべてが完結できて利便性もよいのかもしれません。
総合A●グリーンロードなど、歩車道分離の理想の計画に思い入れを感じました。もっと生かされると良いのですが、そのための住民の意識を高めるソフトが必要であったなと思いました。
総合B●緑の多い環境と、広場に花屋などの露天商が出ている雰囲気はなかなかいいが、駅から遠いのが難点。
総合B●緑の多さ、大きさに驚かされた。センターの商店街が元気なのは頼もしい。
総合B●タウンセンターにシャッター街が無い。

3◆清瀬駅前ハイツ(一般賃貸住宅 258戸/1986年)
評価 S:3.00 K:3.25 D:2.50 R:3.75 総合:2.75(BBBBBBBC)
総合B●郊外の駅前に高密度に住むという形態を、通り抜けの軸線広場を中心にデザインしている。
総合B●利便性の高く、駅前としては比較的まとまった住宅開発だが、デザイン等はごく普通。
総合B●外付け階段が、単調になりがちな北側に変化と占有的に使える空間を作り出している。
総合B●隣接に広大な生産緑地の農地が広がっていることにびっくりした。歩道は歩きにくい。
総合B●狭い敷地を有効的に利用している。
総合B●2棟の間に巨大な壁がある感じ。
総合C●駅前にあるから利便性がいいわけで、特に目立つものは無かった気がします。


4◆グリーンタウン清戸(分譲タウンハウス 500戸/1982年)
評価 S:4.00 K:4.75 D:4.00 R:1.75 総合:3.75(AAAABBBC)
総合A●雑木林と畑の中に低層のタウンハウスがひっそりと並んでいる。3ブロックに分かれ、それぞれがこぢんまりとまとまり、迷い道のような緑道、各戸別の玄関アプローチ、鬱蒼とした保存樹林など、絵に描いたような住環境を醸し出している。これぞ郊外居住の極致か。
総合A●各住戸のアプローチの変化はストーリー性があり、とても良かったです。雑木林(森)が生かされているのがとてもいいです。ピクニックなどに利用されているといいですね。中の路地など楽しに変化に富んでいました。
総合A●敷地が広く低層棟で空がある。
総合A●農地の中に島のようにある住宅地。閉鎖的というより独立性が高く、内部には居心地の良さそうな細かな空間が隠れている。
総合B●緑の路地の中のヒューマンスケールの住宅地は好感がもてる。
総合B●原地形を利用して木立も残され、工夫して設計されたことが良くわかる。しかし、住居棟1階部分はじめじめして湿っぽいのではないか。タウンハウスの理想は良いが、住みづらいと思う。
総合B●タウンハウスはどこも緑があってデザインもお洒落でいいなと思います。しかし、まわりが畑だとあえてこの場所に集合住宅を作る必然性はないのではという考えも浮かびますが。。。
総合C●住宅地の空間としてはなかなか良いが、あの時代にあの立地での住宅供給をすべきだったのかは疑問。(清瀬駅近くにあれだけ農地が残っているのに・・・)


5◆東久留米団地(賃貸住宅建替事業 従前1900戸/1963年)
評価 S:4.00 K:4.00 D:3.50 R:3.75 総合:4.00(AAAABBBB)
総合A●典型的な郊外の大団地。バス便の多さ、タウンセンターの充実に加え、建替え事業でバリアフリーを徹底したり、樹林を再整備しているのも効果的。周辺商店街の昔っぽい活気は驚き!
総合A●建替後も外部空間はできるだけ継承するようにしており、良い印象。
総合A●自然林が生かされていることがよかったです。
総合A●団地隣接の新座市(西堀)の元気な商店街が下町風で親しみが持てる。
総合B●団地そのものよりも、隣接する商業ゾーンが面白い。
総合B●西堀商店街の賑わいにびっくり。
総合B●建替えられた建築物は、廊下が広く、隣の棟とも離れていて住みやすいと思う。緑地も多く、商店も賑わいで良い。
総合B●ここも緑が多くて殺風景になりがちな団地に彩りを添えている(暗くなってしまったのが残念)。


■今回の集合住宅の中で、あなたはどこに住んでみたいですか
滝山団地、東久留米団地★住棟の間が広く、緑道と公園を結ぶネットワークがよく、景観もすばらしい。ともに都心まで1時間以内とは考えられないほど環境が良い。
滝山団地★商業施設、戸建住宅地、集合住宅、緑道・公園がミックスし、街として完結している。
グリーンタウン清戸★閉鎖的ではないが、うまく囲まれて落ち着きのある構成になっている。
グリーンタウン清戸★戸建感覚で庭がある。
グリーンタウン清戸★低層で変化があり楽しい。
グリーンタウン清戸★広大な雑木林がある。
東久留米団地★下刈りされた気持よい雑木林の公園と気のおけない元気な商店街があり、バス便も多い。
特になし★立地条件と住環境とが両立している住宅がないため。


■あなたが住んでみたいと思う「郊外」の住宅地を挙げて下さい
入船中央エステート(新浦安)★駅前で利便性が高いにも関わらず、住環境も優れている。
幕張ベイタウン(千葉海浜NT)★沿道型配置・中庭式住棟、1階店舗などヨーロッパ型の都市デザイン。
ベルコリーヌ南大沢(多摩NT)★変化に富んだ敷地配置自然がある。
ライブ長池(多摩NT)★駅前のパノラマ的景観、各ブロックの趣向を凝らしたデザインなど楽しい。
滝山団地(東久留米)★交通の便がよく、緑が多い。
小平学園住宅地(小平)★国立、大泉と並ぶ箱根土地会社の壮大な学園都市。駅前から落ち着いた住宅地が親しく広がる。近くに鷹の台の学園ゾーンもあり、雑木林や玉川上水の散策も楽しめる。
国分寺市の国立寄り地区★適度な田舎。安心して住めるエリア。
特になし★やはり歩いて暮らせるという点で選択に躊躇します。でもバスを鉄道と思えば良いのかな?


■郊外型集合住宅・団地の計画上、どのようなことが大切だと思いますか
●自然との触れ合い。緑を残すこと。郊外のコンセプトを住民の人にも理解させるソフト(生活の仕方の見本を見せる)。今回の滝山のグリーンロードも、桜の樹を多くするなど、親しみやすく楽しいものにしていると違ったと思う。つくばのように花を植えるNPOなどができ、住民参加のシステムがあると違ってくると思います(もうあるかもしれませんが)。
●周辺の自然(雑木林、田園、水路など)をしっかり保全すること。団地内(あるいは最寄り駅前)で一応、歩いて暮らせること、住棟配置や外部デザインに個性があること、居住者によるコミュニティ形成のきっかけが仕込まれていること。
●住戸廻りが広々としているので、住戸→住棟→ブロック単位と、周辺を段階的に、しかも植栽などで柔らかく区切る空間構成。
●緑を多く取り入れ、ゆとりがあること。
●交通の利便性。人々が憩える緑やスペース。スラムにならないようにすること。
●交通アクセス(バス等)の利便性、商店街、公共施設の充実など、歩いて暮らせる基盤があること。
●これから、郊外で住宅地を計画する場合、よりコンパクトな都市構造を目指すという観点から、そこに本当に集合住宅をつくるべきなのか、まず考える必要がある。


■郊外居住について、あなたの考えを自由に書いてください
●郊外居住というと千葉NTや常総NT、おゆみ野など都心から1時間半以上の所、というイメージがあります。今回のように交通の便が良く、都心まで1時間以内でこれだけの郊外型団地があることは知りませんでした。都心から1時間半以上の郊外NTは大変な開発費をかけ、未だ建設中の所あり、土地の売却が進んでいないので、全面的な見直し、開発を集中させるなどの方策が必要です。(横田宜明)
●人口減少時代の東京圏の都市構造を考えた場合、都市圏はコンパクトにし、郊外住宅地は、かつてのグリーンベルト構想のように、豊かな緑を空間を確保するという観点で考えるべきだと思います。その意味では、かつての空地地区のように、宅地の大半をオープンスペースにした住宅地を復活させることができるといいのですが。(当時は、人口増加圧力で実現できなかったが、これからは都市圏を縮小させることも可能なのでは)(栗原 徹)
●ライフステージ毎の住み替えが都心から郊外への住み替えと捉えられたために、郊外住宅地はあっという間に高齢化してしまった。これからは、都心との対比ではなく独自のリゾート性を持たせ、かつ、郊外住宅地同士の行き来が多く行われることで活性化を図ることが大事だと思う。(溝辺正浩)
●都心のマンションの値が下がる現在、郊外の集合住宅に住む魅力は薄れていますが、今回見た住宅地はどこも緑が多かったためか潤いのある魅力的な住宅地でした。団地は、ただの集合住宅なのではなく計画された街だということを再度認識しました。(野中るみ子)
●緑が豊かであることなど環境面での優位性はもちろんであるが、さらに商店街や医療など歩いて暮らせる社会基盤を備えていて欲しい。(古里 実)
●画一的な家族構成(ライフステージ)にならないよう多様性を持たせるように配慮する。量だけ供給というスタイルではなく、変化を持たせたい。(原 久子)
●郊外は通勤が不便なので、今のところ住む気がない。(千川 明)
●都心居住に対置される郊外居住とは、自然、ゆとり、諸施設、景観などに恵まれた心豊かな暮らしができるエリアであろう。現実には、グリーンベルト構想が挫折して以来、多くの郊外部は虫食い状、無計画に開発され、都会でも田園でもない中途半端で混乱したエリアになってしまった。一部の計画的に創られた意欲的な郊外居住地と、こうしたスプロールエリアとの格差は非常に大きい。しかしながら、あふれるばかりの情報洪水の中で選択と消費に翻弄される都心居住ではなく、自然の営みを肌に感じつつゆっくり自省の時を過ごす郊外居住もまた、人生の一つの道ではないだろうか。(大竹 亮)



★コーディネイターより
企画の主旨について:都心居住ブームの中、あえて郊外居住を採り上げ、その魅力を探ってみましたが、いずれも明快なコンセプトの居住地になっており、ねらい通りの企画となりました。郊外の空家増加や荒廃が懸念されていますが、各団地とも活気と魅力を保ち続けているように思われました。当日は、石田頼房先生が久しぶりに登場されて、空地地区指定の検討経緯と結果についてレクチュアくださり、理想と現実をより深く理解することができました。ありがとうございます。
皆さんの評価について:今回は、大規模な住宅地開発、低層タウンハウス、大団地の建替えという性格の異なる3つの郊外団地に、郊外駅前居住の2団地を加えて巡りましたが、全体として、駅前2団地よりも郊外3団地の方が高い評価でした。特に、樹林地を保存した郊外団地はいずれも周辺との関係(S)に配慮し、内部の環境(K)も魅力的であると認められ、大規模団地の計画性が現在も有効であることがわかります。タウンハウスの中清戸は、デザイン(D)は高く評価される一方、生活利便性(R)は商店街がないことから低評価でした。駅から遠い滝山や東久留米の生活利便性の評価が低くないのは意外ですが、バスの本数が非常に多いこととタウンセンターや商店街の賑わいが評価された結果と思います。なかでも、東久留米団地に隣接する新座市西堀の昔風の元気な商店街は、意外な掘り出し物(?)で、参加者一同みな驚き、とても面白がっていました(!)。
私自身の想いについて:見渡す限り平らな畑や雑木林に住宅が点在する東京西郊・北多摩地区の姿は、私自身が学生時代に隅々まで(バスや自転車で)歩き回った懐かしい原風景です。今回、20年ぶりに皆さんと一緒に歩いて、変化した面も多いものの、計画の基本理念が保たれて街が熟成していることに安心し、涙が出るほど嬉しかったです。東京の郊外は、悲しいことに農地や山林の中へ住宅団地や戸建ミニ開発や店舗や倉庫などが無秩序に混入する場末的な街になりがちですが、そうではなく、それぞれの地区が、計画理念を生かした明確な性格をもった街であり続けて欲しいものです。私がずっとやりたかったこの企画、ようやく果たせました。皆さん、ありがとうございました。(大竹 亮)

▲花小金井/水道敷を利用した多摩湖自転車道

▲コーポレート花小金井(特別借受賃貸住宅)
▲滝山団地/タウンセンターのバス停付近 ▲滝山団地/住宅地をネットワークする緑道
▲清瀬駅前ハイツ(一般賃貸住宅) ▲清瀬市中清戸の志木街道ケヤキ並木
▲グリーンタウン清戸(低層タウンハウス) ▲グリーンタウン清戸(団地内の保存樹木)

 


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