★teku-tekuミニ企画/横浜トリエンナーレ2005+北仲OPENの記録

 



日 時◆2005.12/18(日)10時〜17時頃 (会期:11/18〜12/18)
コース◆横浜トリエンナーレ2005(ビュラン・プロムナード+保税倉庫内部・中庭・埠頭先端)〜 BankART1929+studioNYK (24時間のホスピタリティ展)〜 北仲Brick&White (北仲OPEN:オープンスタジオ+ガイドツアー)
参加者◆9名(確認できた範囲)
    青木伊知郎、青木理惠、青木裕太郎、青木惠次郎、井手幸人、奥村真名美、野中るみ子、 矢口晴美、○大竹 亮(記録とりまとめ)
        (※今回の企画は当日に限らず自由参加とし、会期中に訪問した方の評価をまとめました)


 

1◆横浜トリエンナーレ2005(9/28〜12/18 山下埠頭3・4号保税倉庫)
<全体の感想>

◆会期中6回ほど訪れた横浜トリエンナーレ2005。会期3日目はまだまだ「工事中」(川俣正氏いわく)の状態でしたが、驚くほど自由に鑑賞できて堪能しました。その後、来場者数とともに柵や注意書きが増え、普通の展覧会と同じようになってきましたが、それでも毎日毎日行われるソフト・イベントはユニークで「継続は力なり」そのものでした。飽きるどころか訪れるたびに「変化」していて厚みを増す姿には、現代アートの祭典である国際展の凄みを感じました。(r.a)
◆ARTが街中に自然に存在し、老若男女問わず解放されていることが実感できてよかった。平日に訪れたのだが、幼い子連れの夫婦を多く目にしたのが印象的だった。前回とディレクターが代わったこともあって、比較されることもあると思うが、今回は今回のよさがあっていいと思う。ARTが受け入れられる土壌がある(ARTに寛容とも言える?)横浜らしくてよいと思った。(m.o)
◆前回展は見ていないので比較はできないのですが、何回も足を運び、十分に楽しみました。現代アートとはこういうものかと認識を新たにしました。新潟の越後妻有アートトリエンナーレとは対極の大都市の展覧会で、それぞれの地域性が生かされていることがとても面白いと思いました。(i.a)
◆前回より会場も作品もラフな雰囲気になって、家族連れのお客さんも楽しめるような作品が増えたという印象でした。アーティスト自身もきっと楽しんで作ったのだろうなぁと想像できるような。体験ものが多いので、作品によっては並び時間が長いのが難かも。半年前に磯崎新から川俣正への総合ディレクターの交代劇があったそうで、半年でここまでできるなんてほんとにすごい!と友達が言ってました。ほんとにそうだと思いました。(h.y)
◆アート展というよりも、新しい空間を創造し、特異な体験をもたらす試みであると理解しました。最終日に3時間で急いで回りましたが、作品それぞれの意図を感じとることができました。多くの作品では、そのとき一緒にいる鑑賞者(自分を含めて!)の振る舞いまでが重要な構成要素となっており、ひとときも油断できない緊張感を味わいました。(r.o)
◆アジア的な展示会で楽しかったです。(y.i)
<特に印象に残った作品>

05

◆ボートピープル・アソシエーション「LOB.-13号計画」(海上リビング)★★★★
◆会場入口付近の岸壁に浮かんでいる作品。大勢の人が船内の思い思いの場所に佇んで所在なさそうに揺れている様子を、自分もその一人として眺めつつ参加する不思議な空間です。まさに漂泊体験です。
◆艀の中が公園のような居住空間でもあるような不思議な空間に見事に生まれ変わっていて気に入りました。
◆平日1人で見たときよりも休日に大勢ガヤガヤいたほうが楽しい雰囲気の作品でした。乗るだけでだれにでも分かる気持よさと、究極の「なにこれ?」「本当にこれだけ?」という点が新鮮でした。

06

◆ダニエル・ビュラン「海辺の16,150の光影」(ビュラン・プロムナード)★★
◆寒い寒い日でしたが、雲一つない快晴で空も海も真っ青でした。会場の保税倉庫までの長い長い岸壁を歩く間、無数の赤白の三角旗が、強風の中、抜けるような青空に一面にはためいて、とても美しかったです。(9年前の水戸芸術館ビュレンヌ展の時は、街の商店街にまで彼の鮮やかなフラッグがはためき、中庭の子どもが遊べる迷路作品や商店街のフラッグは、会期終了後もしばらく設置されました。彼は街を活性化するアーティストであり、水戸芸術館はそれをうまく引き出したのですね)
◆展示作品ということを忘れるくらい、ある意味、会場にマッチしていたと思います。

10

◆チェン・ゼン ★
◆05とは全く違った意味でこれも生まれ変わってしまった不思議な空間です。隣のコウマ(11)のピンポン玉が中に入ってしまってこれはとれませんでした。

11 ◆コウマ ★
◆子ども達は普通の卓球台と理解していました。
13 ◆キュレーターマン「SUPER(M)ART@YOKOHAMA」★★
◆9月に長男が優勝し、12月11日のCEO決定戦に出場しました。チェンマイ往復航空券をかけて本気で戦い、惜しくも3位でしたが、再び大きなトロフィーとメダルをもらい、対戦者やキュレーターマンのスタッフたちと仲良くなれた思い出の作品です。壁画にはチャンピオンとして息子の似顔絵が二点描かれました。
◆アートでゲームするという新発見。
18 ◆ジャコブ・ゴーデル&ジャゾン・カラインドロス「天使探知機」★★
◆完全なる沈黙(静寂)が訪れると天使が通り探知機が点灯する、という解説を読んでから小部屋に入り、みんな息を潜めてじっとその瞬間を待つ、というシーンに深く感銘しました。静かに待つことの至福。 ◆何気ない一瞬の大切さに気づかされる、心にしみた作品です。日々の生活の中にある「何か」を視覚化してくれることで、世界観が広がるように思えました。
24 ◆堀尾貞治+現場芸術集団・空気「百均絵画」★
32 ◆KOSUGE1-16+ アトリエワン+ヨココム ★
◆KOSUGEは代官山インスタレーション'03の入選が登竜門となったグル−プで感慨ひとしおです。今回に至るまでの奇想天外な作風の変遷が、今後の活躍を予感させてくれます。会期中は本当によく遊びました。
40 ◆奈良美智+graf 「A to Z」(奈良ワールド)★★★
◆倉庫の内と外をうまく使った小さな建物のようなもの。広いリビング、居心地の良さそうな小部屋、海の見えるテラスなどが狭い階段でつながれ、開放的ながら迷路のようでもある不思議な空間ですね。
42 ◆西野達郎 ★
◆あずまやをホテルにするという発想がいいです。ただ、プレハブの小屋はちょっと違和感。つくりすぎと感じました。
43 ◆野村誠+野村幸弘 ★★
◆期待しないでなんとなく見始めたらすっかりはまり込んだ作品です。パフォーマンスとのからみでのドキュメンタリー上映はアイデアだなあと唸りました。同時に二棟の倉庫の会場案内にもなっていたので鑑賞にも役立ち展覧会自体の再発見も促してくれました。オープンエアでのスクリーン鑑賞は気持ちがよかったです。◆のこぎりなどの動きに合わせた音楽と、映像の臨場感・スピード感は最高です。
59 ◆高嶺格「鹿児島エスペラント」★★★
◆これには驚きました。別世界(小宇宙)ですね!入場まで30分くらい並びましたが、充分に待ったかいがありました。音楽、映像、空間が一緒になって、夢か幻のような光景が眼前に繰り広げられます。
◆会期三日目に訪れた時は人がほとんどいなくてとても落ちついた作品でイチオシでした。足元の誘導灯も全く無く怖いくらいの闇の中で見る光は限りなく作家の意図に近かったと思います。けれどその二日後には危険回避で灯かりがもれていて効果が半減していたのが残念。その後二度と最初の感動はありませんでした。
66 ◆リチャード・ウィルソン ★
◆妻有の作品も見ました。場所を意識した作品に惹かれます。
67 ◆フォルフガング・ヴィンター ★
◆ライトハウスは風景を切り取ると違った風景ができるという眺めから斬新な発見ができました。スインガークラブはただただ気持ちがよかったです。リサイクル品によってエレガントに再構成されている点でも逸品だと思いました。
68 ◆マーリア・ヴィルッカラ ★★
◆彼女の作品はどれもさりげなさの中に品格のある魅力があって個人的に大好きです。新潟・妻有の山笠のライトの作品(「全ての場所が世界の真中」松代町)を見たときと同じ気持ちで惹きつけられたと思ったら、同じ作家で驚きました。
69 ◆屋代敏博 ★
◆ほかの作品の場所に侵入して、回転するという馬鹿馬鹿しさに笑ってしまいます。とても好きです。
?? ◆会場に置かれていたオペラグラス(人の残像が見れるもの)★

 



2◆BankART1929+studioNYK/24時 間のホスピタリティ展(10/28〜12/18)
<全体の感想>

◆アーティストの宿泊場所をデザインし、それを昼間はアート作品として展示する意表のプロジェクト。本当に泊まれるのか?と思われる独創的!空間ばかりで、日常を超えた想像力(創造力)に脱帽です。(r.o)
◆参加アーティストへの宿泊提供はとても評価できます。展覧会運営の経費の中で作家の交通費と滞在費はかなり大きなウエイトを占めるので、きっと横浜トリエンナーレにとても貢献した企画だったと思います。(r.a)
◆一階で開催されていた美術展は良かったですね。BankART1929の1階に建築・美術関連の本、パンフレットの販売コーナーがあります。中央区の水辺回りのマップ(ボートピープル作成)おすすめです。(y.i)
<特に印象に残った作品>
ヤング荘(studio NYK 1F)◆昔懐かしい、貧しいながら妙に居心地がいい古アパートの実物大模型作品。
こたつ(studio NYK 2F)◆◆中に入った時、ガリバーと小人を思い出した。けれど妙に心地よかった。
みかんぐみ(studio NYK 野外)◆煉瓦づくり3両連結の移動式ハウス。災害時の救援拠点(防災キッチン)としても活用できそう。
牛島達治(studio NYK 3F)◆海岸倉庫の普段使われない3階の奥にひそかに展示された。床や天井に設けた無数の滑車の間をワイヤが回転し、虚空のバケツを揺らしているだけだが、妙に存在感と深みがある。
◆BankART1929の地下で開催されていた映像。
◆名前を忘れましたが、木の上の鳥の巣のように個室がある作品は、子どもたちに大うけでした。
◆ツリーみたいによじ登るもの(名称がわからなくてすみません)


3◆北仲White&Brick/北仲 OPEN(11/18〜12/18+オープンスタジオ3days)
<全体の感想>
◆再開発まで1年半の暫定利用スペース(倉庫会社の事務所)に、50人のアーティストや建築家が集まったというだけでも未知の設定ですが、そのスタジオを外来者に開放するというのですから、とてもユニークな実験です。私は、12月18日(日)15時からの村田真氏による北仲ツアーに便乗したので、すべての公開スタジオを巡り、説明を聞くことができました。アーティストのアトリ エはギャラリーを兼ねているので入りやすいのですが、建築家のアト リエは敷居が高いので、ツアーはありがたかったです。それぞれ、看 板や内装も凝ったデザインで工夫して使われていて、中には「ひみつ トリエンナーレ」なんていう企画もあったり、いずれも思い入れが感 じられ、とても面白かったです。(r.o)
◆ここで仕事するとアイデアが出てきそう!(y.i)
<特に印象に残ったスタジオ>
114+115/ブックピックオーケストラ◆厳選された古本が壁一面の本棚 に並ぶ会員制・予約制の不思議な読書室。袋に入った本と開封済 の本から直感的に選びながら、本との偶然の出会いを静かにゆっ くり味わってみたくなりました。
http://www.super-jp.com/bookpick/encounter/
407/共同アトリエ◆加藤朋子(イラストレーション)、萩原卓(建築 設計)、矢野絵美(空間デザイン)の若手3人による共同事務所。仕事上のチームではないとのことですが、スペースを共有するこ とで、内容と雰囲気に幅のある親密なアトリエとなっていました。


4◆こうした横浜の試みがまちづくりにどのような効果をもたらすと思いますか。
◆21世紀に入ってからの横浜は、自らのもつ可能性を有効に使ったアンテナの高い試みが数多いと評価します。海に面した開けた場所であること、旧い繁華街から距離をおいたロケーションでありながら歴史的街並みとも共存共栄しつつ人々を受け入れていること、みなとみらい線という新しい交通手段ができたこと、などなど、先入観のない「白いキャンバス」のような環境ゆえに実現できることを最大限に演出実現しているように感じ、次世代にとって横浜のイメージはこれまでと違った躍動感あるものになると思います。(r.a)
◆ARTに対して柔軟になれると考えます。ARTあるいは現代芸術は、「理解しがたい難解なもの」、「わけのわからないもの」と捉えられることが多いように感じます。横浜の試みは、そうしたイメージの打破、そして理解の一助になっているように感じます。トリエンナーレに代表されるような、ARTの試みが行われている場、「現代芸術発信の場」としての横浜というイメージもまた定着しつつあるように思え、相乗効果が望めるのではないでしょうか。(m.o)
◆横浜市内に約30年住んでいながら、いわゆる横浜の中心エリアに行く機会は意外と少なかったのですが、最近、横浜で開催されるイベントに参加する機会が増えました。いままで休日は何となく東京の繁華街か郊外の商業施設に足が向いていたのが、休日は横浜に出かけるように行動パターンが変わりました。(i.a)
◆横浜トリエンナーレ、BankART1929+studioNYK、北仲Brick&Whiteの3つを回り、共通点として、「古い建物を活用している」「参加型の作品が多い」「空間を変える力を持つ」ということを感じました。これだけでも、まちづくりへの効果は充分に期待できるのですが、特に北仲OPENでは、展示場ではなく、仕事場がアート展にもなるという新しいスタイルを提案していた点が、一歩新しいように思います。暫定利用を恒常化する芸術不動産構想の実現を望みます。(r.o)
◆街の使い方(港湾を含む)の多くのアイデアが、今後の横浜のまちに展開されるのでは?(y.i)


5◆あなたなら、自分の街でどのようなアート展をやりたいですか。
◆最近、横浜で開催されるアートとパフォーマンスとワークショップが同義語であるようなソフト・プログラムに参加する機会に恵まれ、横浜市民であることにウキウキすることがよくあります。(実際、東横線の 綱島駅(自宅最寄)から横浜方面へ向かうことが渋谷方面に向かうよりも多くなっています)横浜もわが街というには距離がありますが、近くで活気づいていることにまずは見聞を広げていることろです。(r.a)
◆横トリがもっと市内各地に広がったら面白い。ミナトヨコハマだけでなく、いろんな横浜があることを知ってほしい。地域性、場所を意識したもの。(i.a)
◆その町・土地の歴史を理解した上で、アート(とりわけ現代芸術展)を行いたいと考えます。互いを理解しあえるような空間として、アートの展示が出来ることが両者にとってプラスになると信じています。(m.o)
◆私の住む東京北区には、つかこうへいの「北東京実験演劇祭」、古楽と現代音楽の「北とぴあ国際音楽祭」という希有なプログラムがあります。長い崖線や旧古河庭園、渋沢邸を有し、かつての田端文士村や赤羽モンマルトルなど芸術家との関係も深い地域なので、今後こうした地域資源をさらに活かしていけば面白そうですね。(r.o)
◆地域を分断する鉄道の高架線をデザインする展示会をやりたいですね。(y.i)

<参照ページ>
 ◆横浜トリエンナーレ2005 http://www.yokohama2005.jp/jp/
 ◆BankART1929+NYK http://www.h7.dion.ne.jp/~bankart/
 ◆北仲Brick&White http://www.kitanaka.jp


TEKU−TEKU 通信へ戻る

TEKU-TEKU HOME PAGE